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アコムインターナショナル 2003
2003アコムインターナショナル 1日目倉本昌弘がツアー記録の59をマークして首位発進!!
まだ初日だというのに、まるで優勝シーンのような騒ぎだった。
大ギャラリーと大勢のカメマンを引き連れてホールアウトしてきた倉本は、ほかの選手たちから祝福を受けて開口一番。「これからは、僕のことを“ミスター・フィフティナイン”と呼んでくれ!」。
12バーディノーボギーの59は、ツアーの18ホール最少スコア。ツアータイ記録の7連続を含む怒涛のバーディラッシュで、新記録を樹立だ。
始まりは、出だし10番のパー4だった。残り135ヤードから10メートルに乗せたバーディパットを、ど真ん中から沈めた。
波に乗って12番では、97ヤードをピッチングサンドで80センチにピタリ。15番パー4では7メートルを決め、16番パー5では手前のバンカーから2メートルに寄せて、快調にスコアを伸ばす。
今月はじめに44インチのSシャフトに替えたドライバーと、今週、久しぶりにバッグに入れた35.5インチの中尺パターが、「ハマったんです!」。
柔らかめのシャフトのドライバーは、無理なく高い球が打てる。余分な力みが抜けると、ゴルフはうんと楽になる。この日の倉本には、石岡のクリークも、ハザードも目に入らなかった。「だって、曲がる気がしないんだもん!」。“ジャック・ニクラウス”がしかけた罠さえ、問題ではなかった。
先週まで悩みに悩んでいたグリーン上は、「普通のパターの約2本分の重さ」という中尺パターが速攻解決だ。振り子の要領で重みを感じながらストロークすれば、パンチが入らず、距離感もあわせやすい。今回のクラブ選択がどれほどに「大成功」(倉本)だったかは、18番からの7連続バーディが、何よりも物語っている。
7連続目の6番で、190ヤードの第2打を5アイアンでOK距離につけて、この日11個目のバーディを奪ったとき、さすがのポパイもいよいよしびれた。
「あとひとつでツアー新記録」そう意識したとたん、欲が出てくる。続く7番でもバーディを奪えば、ツアーの連続バーディ記録をも打ち破れるのだ。「なんとか決めたい・・・」。しかしこの日はマインドコントロールも抜群だった。「僕は、記録を出すためだけにゴルフをしているわけではない」と即座に気持ちを切り替えた。「このまま、ノーボギーで上がることも大事」と、翌日につながるプレーを心がけることで、攻めていきたい気持ちを、うまく抑えた。
連続バーディ記録こそ途絶えたが、安全策を貫いた残り3ホール。それが結果的に、記録達成につながった。
最終9番パー4。グリーンオーバーを警戒して1番手小さい9アイアンで右手前9メートルに乗せたこのバーディパットをど真ん中からねじこんで、新たな歴史を刻み込んだのだ。
アマチュア時代から“天才”と呼ばれた。プロデビューした81年には、いきなり6勝をあげ賞金ランク2位の大活躍。ツアーにさまざまなレコードを打ち立ててきた。
そして48歳を迎えた今、
「こうしてまた“足跡”を残せたことは本当に貴重な体験。・・・今日は1打1打が思い出に残るラウンドでした」。
行く先々で、「おめでとう!」「おめでとうごさいます!」「クラ!やったな!」「倉本さんっ、ほんっとすげえです!!」賞賛の言葉を浴びた倉本。初日にして早くも5打の貯金を積み上げ復活優勝のチャンスも見えてきたが、もしかするとこの日マークした59という数字は、自身29個目の勝ち星より価値あるものだったかもしれない。
※この日倉本が出した「59」は、米ツアーでは、デービッド・デュバル(99年ボブ・ホープ・クライスラークラシック)ら3人しか達成していない世界タイ記録。欧州ツアーでは、ダレン・クラークらが記録した「60」が最高。