記事
ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2003
一度はやめてしまおうかとまで思いつめたゴルフ、その尾崎直道を支えたものは
「最近、良いスコアが出なくても、なぜか悔しいって思えないんだ・・・」。
9年間、挑戦し続けてきた米ツアーからの撤退を決めて、今年で2年目。47歳を迎え て、どこか心に張り合いをなくしている自分がいた。
ちかごろのツアーは、40歳代の復活が際立っている。昨年は、中嶋常幸、湯原信光、 兄・将司は777日ぶりの優勝を挙げた。今年は、倉本昌弘がツアーレコードの59を マークして勝った。
「若いときなら、それに刺激を受けたりしたんだろう。でも今は、これから自分のゴ ルフをどうするかにばかり気がいって、すっかり“人は人、自分は自分”になってい たね」。
一方で、次々と台頭する若手選手たちの活躍にも、ムキになって歯むかえなかった。 むしろ「自分がギャラリーになって、若い子のゴルフに感動したりして(苦笑)」 ゲームに対して、すっかり傍観者になっていたのだ。
「勝負に血をたぎらせるのが、尾崎家の気質」(直道)。分かっていても、いっこう にテンションは上がっていかない。ゴルフをするより、家族サービスをしているほう が居心地が良いとさえ思うこともあった。
妻・世志江さんに「もう、ゴルフはやめてしまおうか」とこぼしたこともある。そん な夫に世志江さんは言った。「ゴルフをやめて、何をするの・・・?」。改めて考え な おしてみても、行き着く先はゴルフしかなかった。会場にくれば、無意識に練習場に 足を運び、一心に球った。
迷いの時期も、「やっぱり、俺はゴルフが好きだから・・・」その思いだけが、唯一 の 支えだったのだ。