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ジョージア東海クラシック 2002
「ビビってないよ!」
今年の春先は、どん底だった。
フェード球を打ちたい、と練習をするうちに、今度は、チーピン気味の引っかけ球が多く出るようになってしまい、それをスライス球に修正しようとして、今度は手打ちに。
「いったい、どう打てばいいかわからくなって…」
すっかり混乱してしまった川原は、今季出場20試合中、予選通過わずか5回と、惨憺たる成績が続いていた。
今大会直前も、6試合連続予選落ちで、「そんな僕が今週ここにいるなんて、信じられない…」。自身初の単独首位に、いちばん驚いているのが、本人だった。
3週前から取り組みはじめた課題が、苦しんでいた日々に、“抜け道”を作った。
「グリップや、打ち方で球筋を変えるのではなく、クローズに構えたらフック、オープンならフェード。そういうシンプルな打ち分け方」
さらに先週のオフ、ビデオで自分のスイングをチェックしていて、「アドレスでボールが中に入りすぎていた」と気付き、修正を加えたことで、思い通りの球が出るように。
「いまやっと、自分の最高のゴルフに戻りつつある」
手ごたえを感じた矢先の、この日の4アンダー。悩みから解放されたと同時に、この混戦からも、一歩抜け出した。
V争いは、最終日最終組でまわった昨年の今大会(4位)以来だ。
久々に、プレッシャーのかかったラウンドには「やっぱり、これまでの不安が出てしまった」と、ほとんどのホールでラフに打ち込んだものの、17番、18番は140ミリ以上に成長した、その深いラフから連続バーディを奪う、しぶとさを見せた。
「今日は2つ伸ばせればヨシと思っていたのに。最後の最後に、ラッキーでした」と、端正な顔をほころばせた。
1打差で、ジャンボ、谷口、佐藤、伊沢…とビッグネームを従えて挑む最終日は、
「そんなに簡単に勝たしてくれる、とは思っていない」と、厳しい戦いを覚悟しつつ、「明日も、4つ伸ばす。それならきっと勝てる」と、唇を引き締める。
予想される極度のプレッシャーとの戦いにも川原は、「ビビっていない」。
その表情には、(あのどん底から這い上がってきたのだから…)という、ほのかな自信が、みなぎっていた。