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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2008
谷原秀人が初代チャンピオンに
優勝賞金は4000万円。
どちらが勝っても、トップに躍り出る。
前週までの賞金ランク4位の谷原秀人と同5位の矢野東が、ジャパンゴルフツアーの賞金ランク1位の座を競ってデッドヒートだ。
「絶対に勝つ。東には絶対に負けない」。
親友のよしみでひとつ上の先輩も呼び捨てに、強い決意でのぞんだ谷原が先に5番で抜け出すと、懸命に逃げた。
この日最終日に奪ったバーディは5つ。しかしどのバーディよりも価値あるパーセーブは15番パー4だ。グリーン右のバンカーに打ち込んだ第2打は「アゴにくっついていて。テイクバックも取れない状況」。
グリーンを狙わず、とりあえずは別の方向に脱出する方法も考えたが「確実にパーを取る選択をしよう。
グリーンを狙うなら、上からヘッドをぶつけるようにして打つしかない。
「あれは、転がすしかなかった。ただその打ち方で、球が上がるかどうか分らなかったが運が良ければ乗ると思った」。
果たして、勢いよく転がり出たボールは運良くピンを直撃。
「当たらなかったら、かなり行ってしまったと思う」。
その反動でスピードを緩めたボールはかろうじて、ピンから5メートルのところで止まった。
このパーパットを決めて、普段めったに感情を出さない男から、ガッツポーズが飛び出した。
最大のピンチを切り抜け2打差を守ったものの、そのあとも「気の抜けるホールはひとつもなかった」。17番パー3。7メートルのバーディチャンスを決めた矢野東が挑むような目つきでガッツポーズを突き上げた。
この時点で差は1つ。対する谷原は3メートルのバーディチャンスだ。
「東はあれを入れてきた。もうびっくりですよ」。
動揺を押し隠しつつ「自分も絶対にこれを決めなきゃ!」。
すぐに2打差で突き放した。
最終18番でもバーディパットを決めて、矢野がまたもや威嚇するように拳を握ったが、もう心配ない。
谷原はタップインのパーパットだ。
大接戦を制してツアー通算8勝目。
有言実行の今季2勝目は「妻のおかげ」と、照れもせず言った。
今季1勝は5月のマンシングウェアオープンKSBカップ。
しかし、あのときは躊躇なくウィニングボールを観客席に投げこんで、応援に来ていた絢香さんに叱られたものだ。
昨晩、食事の席で「明日は、絶対に私にちょうだいね」。
約束どおり、ホールアウトするなり妻の手にウィニングボールを握らせて、18番グリーンで固く抱き合ったのもつかの間。
「今年はもう1勝する」と、すぐに次の目標を見据えた。
ランク1位に躍り出たとはいえ、まだまだ強豪はひしめいている。
「30代前半の中で、僕が一番」と言ってのける自信家だが、油断は禁物だ。
「早くもう1勝して下との差を離したい」。
年頭から公言している初の賞金王獲りにむけ、余韻にひたっているヒマはない。