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アコムインターナショナル 2003
夢はアメリカ、再び挑戦意欲を呼び覚ました倉本昌弘のツアー通算29勝目
それでも“2つ目”のご褒美には、その前にきっちりと試練が与えられた。過去28 勝、「誰にも負ける気がしない」と豪語してほとんどぶっちぎりで勝利をさらってき た倉本にとって、プレッシャーを全身に受けながらのこの日のラウンドはほんとう に、つらい戦いだった。プレーオフ1ホール目の18番で、1メートルのウィニングパッ トを決めて接戦に決着をつけたとき、まず脳裏をよぎったのは「もうこれで、今日は プレーをしなくて済むんだな」という安堵感だった。
ホールアウトするなり、目を真っ赤に腫らした湯原信光に抱きつかれた。日大時代の 後輩であり、良き友人。そのとき、倉本の目にもうっすらと涙がにじんだ。表彰式の 始まりを待つ間、思わず深い深いため息をついて「疲れた・・・」と、ひとことつぶや いた。
50歳になったら、米シニアツアー(チャンピオンズツアー)への参戦が目標だった。 しかし低迷が続いていたときは、それさえも「無理ではないか」とあきらめかけてい た。
「でもこうして勝って、これからシニア入りの50歳まで国内での2年間シードをもら えたとなると、向こうへ行っても頑張れるかな、と・・・」。
激戦を戦い抜いて勝ち取った8年ぶりの栄冠。再び、自信を取り戻したツアー通算29 勝目。この喜びを、いまもっとも分かち合いたい相手は、チーム・倉本の面々と、も ちろん、結婚10年になる夫人のマーガレットさんだ。
「ちょうど一緒になった直後にスランプに差し掛かり、つらい思いをさせてきまし た。このインタビューが終わったら、さっそく電話をかけて彼女をねぎらってあげた い・・・」。
うっすらと疲労がにじんでいた48歳のポパイの顔に、そのとき、なんとも いえない優しい笑みが浮かんでいた。
去年は湯原君、中嶋さんたちが次々と復活優勝をあ げて、ジャンボさんが最年長優勝。『私にもやれる』と思いながらもなかなか結果が 出ずにつらい日が続いていました・・・」。