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フジサンケイクラシック 2008
プロ5年目の藤島豊和がツアー初優勝!!
ともに初優勝をかけたプレーオフ。1ホール目はティショット、第2打とバンカーを渡り歩いて覚悟した。
「7割方はもう負けた、と」。
だが藤島は、残り3割の可能性に賭けた。
脳裏にあったのは、あの金メダリストだ。
先月、3週間のオープンウィークは、練習もそっちのけで北京五輪に釘付けだった。
中でも、競泳の北島康介選手に自分を重ねた。
「絶対に勝つという強い気持ちさえあれば、あんな凄いこともできる。ああいう選手になりたい。次にチャンスがあったら、僕も絶対に勝ちたい」。
それがまさにこの瞬間。
グリーン右手前のバンカーは深く、そのヘリは身長167センチの藤島よりもさらに高かった。
ピンは、旗と若干の竿が見えるくらい。
「10回打って、1回寄ればいいという確率」。
最後の厳しい局面に、それでも藤島は「どんなところについてもパー、バーディを取りに行く」と、見えないカップを果敢に狙った。
昨年9月のコカ・コーラ東海クラシックでも、コロンビアのカミロ・ビジェガスとのプレーオフ。
しかし、あのときとは状況がまるで違う。
「あのときは初シードを取るのが先で、優勝はまた次でもいいとさえ思っていた。だけど今回はめったにないチャンス。絶対にモノにしよう」。
強い気持ちで打った第3打はギャラリーの大歓声で、「相当近くに寄った」と分った。
1メートルもないウィニングパットは震えながら打った。
対する岩田はグリーンを外し、アプローチも寄せきれずにボギー。
その場で敗れた先輩をきつく抱きしめながら「申し訳ないとは思うがそれが勝負の世界。同情はしない」ときっぱりと言った。
それが敗者への礼儀というものだ。
本戦の18ホールは同じ最終組の片山がダブルボギーにした9番で、長いバーディパットを決めるなど「自分にはツキがあったと思う。神様がついていてくれたかな」と、振り返る。
タイで迎えた最終18番。バンカーショットの脱出に失敗して脱落した片山には「日本を代表する選手がなぜあんなミスを」と驚きつつ、「この1回きりじゃなく、これからまた片山さんに何度でも勝てるよう頑張ります」と、力強く言い放つ。
昨年の賞金王、谷口徹は40歳。
一昨年まで3年連続の片山は、35歳。
先週の甲斐慎太郎に続く20代のチャンピオンは「若い選手が上に来ると人気が出る。僕より若い選手が出てくれば、もっと盛り上がる!」。
これからはその自覚を持って、男子ツアーを引っ張っていく。