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三井住友VISA太平洋マスターズ 2006

中嶋常幸「ボランティアのみなさんにも心からお礼が言いたい」

4年ぶりの表彰式で中嶋は、帽子を取って何度も何度も頭を下げた。
「今日も、朝早くから大会に協力してくださったボランティアのみなさんに、この場を借りて心からお礼が言いたい」。
7時20分の競技再開に合わせ、この日は中嶋も早朝4時に起きたが、大会を支えるボランティアのみなさんの苦労はそれ以上だ。

だからこそ余計に、参加してくださった延べ約800人のボランティアのみなさんには自然と感謝の気持ちがこぼれ出る。

今大会がボランティア制度を取り入れて、もう21年になる。
年々、その輪は膨らんでいき、いよいよ“チーフ”制度が出来上がったのが13年前。

ボランティアが、自分たちの手で管理・運営をする。
今でこそ、各トーナメントでも広がりつつあるこのシステムだが、その先駆けともいえるのがこの三井住友VISA太平洋マスターズなのである。

ボランティア歴の長い“ベテラン”の中から、全体を統率する“チーフ”を数人決めて、どうすれば一番スムーズに運営できるのか。互いに知恵を持ち寄る。

そこには、運営社や主催者が介入することはほとんどない。
人任せの参加ではないから、ますます自主的になる。結束力は強まっていく。

たとえば、選手のプレーについて歩きスコアチェックするマーカーや、移動式スコアボード係の担当割をくじ引きで決めるようになったのも、ボランティアの中から意見が出て導入されたことだった。

「遠方から来ているから、早い組につきたい」
「どうせやるなら有名なプロ、自分がファンの選手がいい」

そんな各人の希望を聞いていたらキリがない。
互いに我を通していたら、混乱を招くだけ。その場の空気も悪くなる。不愉快な思いをして家路につくことになる。
「来年は二度と来るか!」という気持ちにもなりかねない。
だから自然と、いちばん公平なくじ引きの方法に落ち着いた。

そのかわり、スタート前に5分間の“フリータイム”を設ける。
互いに、合意のもと担当組のトレードをする。
話し合いの末に、互いの利害が一致したら交渉成立・・・。

そんな和気藹々としたムードが、ひいてはトーナメント全体の一体感を生む。
日を追うごとに「みんなで大会を盛り上げよう」。そんな気持ちでひとつになっていく。
ボランティアのみなさんの気迫が、最終日にはついに会場全体を包み込む。

今大会の主役は、52歳のチャンピオンだけではなかった。
「僕の優勝も、ボランティアのみなさんのお力添えがあってこそでした・・・」(中嶋常幸)。

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