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アコムインターナショナル 1999
通算3アンダー36位で予選通過した風見博は、元寿司屋で元歌手で…
風見は、16歳のとき、寿司屋を営む父親のあとを継いで、若旦那として寿司を握ったが、その5年後、ポップスバンドの『パラダイスキング』のボーカルにスカウトされた。
「2年」という約束で、華やかなステージに立ったあと、また店に戻って寿司を握っていたが、26歳のとき、再び店のカウンターを飛び出す。
「プロゴルファーになる!」
風見、26歳のことだった。
それから、プロテストに合格するまで、14年の時を要した。
38歳で晴れてプロになり、青木功の門下に。しかし、成績が残せず、青木の運転手と間違われたこともあった。
そして、昨年。
風見はとうとう、“日本”を飛び出した。
「米シニアツアーに挑戦する!」
その年の出場予選会に合格。
「予選会は14位で合格したわけだけれど、どの試合にも出場権があるわけじゃないんです。いわば、“補欠”扱いで、ずっと会場に行ってあきが出るのを待ったり、マンデートーナメント(予選会)に挑戦したり…でも、延々待っても出られない試合のほうが多かった。今年400万ほど稼いでるけど、経費はその倍以上。大赤字だよ」
風見は自嘲気味に笑うが、表情には充実感が漂っている。
「とにかく、向こうは楽しいね。友達もできたし、なにより、すごい選手が一杯いる。選手の練習をただ見てるだけでも面白いんだ。
こないだは、へール・アーウィンのパットをずっと見ていて、ぼくに足りなかったものを見つけたよ。それが何かは秘密だけれど」
今大会は、会場の石岡ゴルフ倶楽部のコースアドバイザリーを務めている関係で、推薦出場している。
「きょうは途中でダボ打ったりで2オーバーにしちゃって、『(予選通過が)やばいな』って思ったけど、うまく盛り返せた。決勝ラウンドは、若い子を“食っちゃう”かな。
一緒に回る子に、“ジジイ”に負けるんじゃないゾ』ってハッパかけちゃおう!」 と、52歳で今大会最年長出場の風見は、豪快に笑った。