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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2008
谷原秀人「今年の目標のひとつが、結婚後の初Vでした」
同月の全英オープンでアーニー・エルスの妻がやはり夫の全プレーを記録していることを知り、それにならって始めた。
「ゴルフのことはまったく分らない」という絢香さんなりに、夫の1打1打をできるだけ細かに書き留め、時にはそのとき浮かべた表情やしぐさ、またギャラリーが夫について話していた内容までメモしておくことも。
そして最後にその日1日、夫のプレーを見て感じたことや、激励のメッセージを記す。
いつも帰りの車の中でそれを読み、笑い転げていた夫はしかし、そこにヒントを見いだしていた。
妻のメモから自分のプレーの弱点が見えてくる。
「いつも同じ場所でミスしていたり、毎回、同じラフに入れたり。逆に、ここの攻め方は確かに良かったから明日もこうしようとか、反省したり攻略法が見えてくる」と、感謝する。
絢香さんは、「結婚して改めて、彼が本当にゴルフに一生懸命だということが分った」という。
夢の実現に自分も少しでも役立ちたいとの思いから、米ツアーの再挑戦をもくろむ夫には、英会話レッスン。
ハワイ在住の経験がある妻が堪能な英語で話しかけるが、連戦で疲れ果てた夫はめんどくさがって、つい日本語で答えてしまう。
「会話が成り立っていない。意味がないじゃないと叱られる」と谷原は笑うが、そんな微笑ましい日常が、連戦の疲れを癒してくれる。
そして何より、絢香さんの笑顔。
今年、パッティングの不調で苦しむ時期も、どんな応援の言葉より勇気づけられ励まされた。
今季の目標は初の賞金王獲りだが谷原にとって、それと同じくらいに大切だったのが「結婚後の初V」だ。
「結婚してダメになったとか言われたら、彼女に申し訳ない。そういうプレッシャーを、常に自分にかけてやっていた」。
愛する妻に捧げる1勝は、初代のアジア太平洋地域のNO.1を決めるビッグタイトル。
日頃の恩に報いるには、申し分ないお返しだ。
この日は1日中「ドキドキ」のしどおしで、すでに17番ホールから涙ぐんでいたという妻は、夫の勇姿に感極まって言った。
「今日は、ノートに書くことが一杯ありすぎます!」。
いつにもまして、甘い愛の言葉がたくさん並びそうだ。