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「目指すは中年のアイドル!!」(中嶋常幸、7冠達成記念祝賀謝恩会にて)
「今いちばん思うのは、もういちどマスターズに出られたらいいなってこと」。
思い切って口にしてしまったら、ますます照れてしまったようだった。
もごもごと、言い訳するように続けた。
「そんなの無理だって気持ちは自分にもあるよ。ありえないって気持ちも、確かにあるんだ」。
しかしその一方で、まだ心の奥に燻っているものがあることを自覚している。
「燃え尽きてない、灰になっていない思いがある。選手としてもういちど、オーガスタのティグラウンドに立ちたい。そういう気持ちが、プロとしての自分を支えている」。
壮大な計画をひとつ打ち明けてしまったら、堰を切ったようにどんどんと、こぼれ落ちてきた。
これからの夢。
ゴルフの伝道師となって、楽しさや魅力や伝えていくこと。
少しでも長く第一線で戦って、「若い子に憧れられるような選手になること」。
昨年10月の日本プロシニアで史上初7つ目の“日本”と名のつくタイトルを獲得したが、これで終わりではなかった。
まだ、取りこぼしがあったことに気がついた。
レギュラーツアーの『UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ』。
昨年、ツアープレーヤー日本一を決めるこのメジャー戦で、1打差2位で最終日をスタートしながらチャンスを逃した。
「あれは・・・惜しかった。あれさえ勝っていれば“8つ目”になっていたはずだった。今年はぜひ勝って、来年は“8冠”のパーティをしよう!」と、ぶち上げた。
「・・・だからみなさん、それまでにまた、新しいスーツを新調しておいてください」とおどけて笑った。
父・巌氏の手ほどきを受けて完成したスイングはデビュー当時、「サイボーグ」と呼ばれた。
海外メジャーでも好成績を残し、セントアンドリュースで行われた78年の全英オープンでは脱出に4打かかった17番ホールのバンカーに「トミーズバンカー」との別称がつくなど、“トミー”の愛称は世界でも知られるところとなった。
時代の変遷とともに、さまざまな愛称や形容詞がつくことこそスターの証し。
世間をあっといわせる活躍を続けてきたことの証明だ。
そんな中嶋が目下、目指しているのが「中年のアイドル」。
47歳で7年ぶりの復活優勝をあげたときは、「中年の星になる」と宣言した。
「・・・でも、そのあとに室田とかジェットとか芹澤とか。中年の星を名乗る選手が一杯出てきて(笑)。それならばと思いついたんだ。たくさんいる星の中でも、その上に立てるアイドルはたった一人。この地位は、絶対に譲らんよ!!」と断言したが、今の中嶋になら“中年”に限らない。
ゴルフ界のアイドルといっても良い若さと勢いがある。