Tournament article
ダンロップフェニックス 2010
地元の津曲にベテラン井戸木・・・シード権争いの2人が好発進
「今日はティショットがところどころ曲がっていたけれど、ショートゲームでカバー出来た」というとおり、左のラフから約2.5メートル残ったパーパットは、下りスライスの難しいラインをしのいだ。
バーディにも「ナイスパー」にも、ロープの外から力のこもった声援が聞こえてくる。「お父さんの声だって、すぐに分かる」。
父・義弘さんのエールを、ときには「プレッシャーに感じてかえって力が入ってしまう」こともあるというが、この日はうまくパワーに変えることが出来た。
「初日3アンダーは、最高のプレーが出来た」と、まずは好発進で恩に応えた。
現在の賞金ランキングは89位。3年連続のシード権も、上位70人の枠にはまだ届いておらず、黄色信号が灯っている。
「今年は最初から、そのことばかり考えて、ゴルフにならなかった」という。
2008年のドライビング王は、しかし雑念が邪魔をして、高いポテンシャルも生かせないまま、残り3戦の瀬戸際を迎えてしまった。
特にショックだったのは、先週の三井住友VISA太平洋マスターズだ。
太平洋クラブ御殿場コースは、「得意コース」と自負していただけに、この時期の予選落ちは痛かった。
しかし、それでかえって吹っ切れた。
「今年はこういう流れなんだ、と」。そう思ったら、少し気持ちが軽くなった。そして迎えたこの地元開催のダンロップフェニックスは、「せっかくこんなに素晴らしいコースでゴルフが出来るのだから。もう、開き直ってせめて良い思い出になるように、楽しく回ろう」。
気持ちの変化が、好スタートをもたらした。覚悟を決めたら、「もう、シード落ちも、怖くない。明日も、余計なことを考えずにゴルフを楽しむ」。
土壇場での大胆な気持ちの切り替えが、奏功するか。
そして同じく3アンダーは、4位タイにつけたベテランも薄氷の日々が続いている。賞金ランキング87位の井戸木鴻樹も、シード権の確保に奔走するひとりだ。
今季不振の原因は、主にパッティング。「今年は長、中、短。あらゆる長さのパターを試したが、本当に全然ダメだった」との本人の弁は、謙遜ではなかった。マイナビABCチャンピオンシップで初日、2日目と同じ組で回ったジャンボ尾崎も呆れた。
「お前のパットを見ていたら、こっちが病気になりそうだ」。
厳しい一言とは裏腹に、ホールアウト後は手取足取りのレッスンをしてくれた。「テイクバックを上げるタイミングを教えてもらって、とてもリズムが良くなった」と感謝する。
今月2日に49歳。シニア入りを目前に控え、「もう、疲れましたわ」とは、偽らざる本音だが、「やる以上は頑張ります」。自らにムチ打った。