Tournament article
サン・クロレラ クラシック 2011
平塚哲二が単独首位に
左手甲は3年前にも「骨が飛び出て、そのせいで腱を痛めた」。あまりの痛みに、ろくにクラブも握れない。練習も出来ない。
この日もはなから諦めモードで「散歩してくるよ」と言って、出ていった。いきなり1番で13メートルのバーディトライがカップに沈んだ。
「痛みで力が抜けてくると、手が被って逆に強い球が出て左に飛んでしまう」。
再三、ティショットを曲げながらも痛みの程度が軽いアイアンショットなら、どうにかグリーンを捉えられた。
「久しぶりにパットが決まってくれた」と、最終18番も8メートルのバーディ締めに、午前スタートの池田勇太を1打差で追い抜かして単独首位に立った。
今週は火曜日の練習ラウンドで、仲間の矢野東にこぼした。
「最近、パットがカップを舐めて舐めて、しゃーないねん(しょうがないんだよ)」。
「それは平塚さん、強すぎるからだよ」と、矢野に言われて心当たりはあった。
今季は序盤でラインが読みづらく、いっそラインを殺してしまおうと、強気のタッチで打つようになっていた。それで入っているときは良かったが、近ごろでは「カップをグルグル、グルグル回る」。
矢野に言われて気がついた。
「カップに届かなくてもいい、くらいの気持ちで打とう」。
それでもまだ強いかなという感覚はあるそうだが、今週のグリーンにはジャストタッチでハマったようだ。
もっとも、好スタートを切っても景気の良いことは言えそうにない。左手の痛みに加えて先週は時差ボケと疲れが重なり熱が出て、いまは扁桃腺が腫れている。風邪引きのガラガラ声で「明日も散歩するつもりで楽しくやります」。
とはいえ、満身創痍の優勝争いは慣れっこだ。
左胸を剥離骨折。左肘は靱帯断裂。2004年のダイヤモンドカップはこの状態で、傷だらけのツアー通算2勝目を挙げている。他にも体調不良を押して出場し、V争いを繰り広げた大会は、数知れず。
今季はアジアと欧州と、日本ツアーを掛け持ち参戦。行ったり来たりの強行軍の中で、あわよくば欧州ツアーのシード獲りをも目指している。
間もなく40歳の声を聞く今もあいかわらずの鉄人ぶりで、国内では2年ぶりのツアー通算6勝目を目論む。