Tournament article
中日クラウンズ 2012
スティーブン・コンランは「これ以上、心配かけたくない」
「なぜなんでしょう・・・。自分でもよく分からない」。
和合の13番ホールを過ぎたあたりから、もうろうとしてきた。「のども痛くて熱っぽい」。上がってくるなりそんな第一声も、かすれてほとんど声にならない。
今週に入ってから「なんとなくずっと体がだるかった」。体調不良が、本格化したのがこの日の朝だった。
会場に来て、医務室で熱を測ると38度もあった。
同じ豪州のブレンダン・ジョーンズも、風邪ひきだ。大親友からうつされたのか・・・。
棄権も頭をよぎったが、試しに練習場で打ってみると、思いのほか良いショットが打てた。
「自分では、普段どおりに打っているつもりでしたけど。熱のせいで、ほどよく力が抜けているのかな。というか、逆にいつもは力が入りすぎているんだね」との苦笑いも、ひどくやつれて弱々しかった。
15番で、ティショットをがみごとにディボット跡にはまっていたが、怒る気力もない。
「いや、ボールは手前側に入っていたし、ライ自体は平らだったし。問題なかった」と体調不良など、みじんも感じさせずに平然とパーセーブだ。
上がりの2ホールも、ふらふらとした足取りながら、見事な連続バーディを奪ってこの日のベストスコアタイの65。元来、安定したプレーヤーは、まさに怪我の巧妙。通算9アンダーは、ぶっちぎりの単独首位で上がるなり、家族が駆け寄りふらつく父をしっかり支えた。
妻のバージニアさんと、18歳になる長女のクラウディアさんと、長男は13歳のジェームスくん。
コースでも、木陰から父を気遣いながらついて歩く姿があった。
「そりゃあ、心配ですとも」とバージニアさん。
「これ以上、家族には心配かけたくないですね」と相変わらずかすれ声の夫をいたわる。
家族の愛に報いるためにも、今日はひとまずきっちりと医者にかかり、まずは体調を万全にして、週末こそこのままぶっちぎって逃げ切るしかない。