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ダイヤモンドカップゴルフ 2013
中嶋常幸は6位タイに【インタビュー動画】
8番では松山のボギーを横目にバーディを奪い、一度は単独首位に立ってみせた。
それだけに、悔やむらくは直後の9番だった。「左の林からカット目に流していければ、セカンドをピッチングとかで打てると狙ったけれど、1ヤードも戻ってこなかった」。つまり、左の林の上から戻ってくるフェードボールを打とうとしたが、ボールはそのまま林の中へ。「ススキの子どもみたいのが生えていて。テークバックが取れなかった。絡んでしまって、あれが精一杯」とそこから横に出すしかすべはなく、3打目も「下手っぴだった」とグリーンを外して、4打目にようやく乗せた1メートルもないボギーパットも逃して、「このダブルボギーが流れを悪くした」と自ら好機を手放した。
「14番からは、エンジンの壊れた船」。すぐ横に見晴らす大洗の海原に揉まれるように、「流されてばかりで」。
15番でボギーを打てば、そこから立ち向かう気持ちには、とてもなれなかったという。「その時点で3ストローク差。16番から3ホールは簡単にバーディが取れるホールではない」と大会最多の4勝は、うち1勝がここ大洗と、大好きな庭であればなおさら、先の展開が読めてしまった。
「悔しいよ。その気持ちは変わらない」。相手がたとえ21歳であっても。自分とは37歳も離れていても、「相手の歳は関係ない。何歳であろうと」。勝負に破れることに、年齢は言い訳にも、慰めにもならない。
そんなベテランの真剣勝負こそが21歳の4日間を、いっそう実りのあるものとしたこともまた事実だ。予選ラウンドでジャンボ尾崎と回り、最終日は中嶋と優勝争いを繰り広げた松山は、「難しいコースで偉大な人と、回らせていただいたから、勝つことが出来た」と言った。
「中嶋さんは、たとえ球を曲げてもそのあとのリカバリーショットが凄い。集中したときの凄さも、自分とは比較にならない。僕もジャンボさんや、中嶋さんのような存在になれるように頑張る」と、その雄姿をしっかりと目に焼き付けた。
「いずれ松山や石川遼の時代が来る」と、中嶋も信じて疑わないが、そのためにも自分を含めた“AON”こそ、まだまだ彼らの良き目標でなければならない。
「ジャンボ!」と呼びかけた。「聞いていますか? 僕もまだまだレギュラーツアーで頑張ります!」。
これからも、共に切磋琢磨で戦いながら、次世代の成長をしっかりと見届ける。「次を担う選手が出てくることは嬉しいし、だからこそまだまだ自分たちが頑張らないといけない」と、AONとして与えられた大きな役割を、改めて突きつけられた優勝争いにもなった。
史上最年長Vのツアー通算49勝こそ逃したが、今回の最終日最終組で、再びその気力も沸いてきた。「やるよ、俺はレギュラーツアーの選手。今日も8番を終わって、トーナメントリーダーなんて。こういう雰囲気を持てているのがいい」と、ロープの外からさかんに飛ぶ「大丈夫」「まだやれる!」「頑張れ」などと地元ファンの声援にも押されて、気持ちを奮い立たせることが出来た。
「これからも、まだまだAONの健在ぶりを見せたい。これからも最終日最終組でやれる選手でいられるように頑張る」。58歳は、まだまだ若手の壁になるつもりだ。