Tournament article
マイナビABCチャンピオンシップ 2015
谷口劇場へようこそ!!
「OKイーグルを獲る」。
次の7番で取り返す気満々。
この日も前方にティが設定されて、実測299ヤードのパー4は谷口でも十分に、ワンオン可能だ。
しかし「ドローすると思ったら、まっすぐ行ってしまった」と、次は右ラフからのアプローチに我ながら、泡食った。
「チップインイーグルを、獲ってしまった!」。
思わず空中に放り投げたサンドウェッジをカッコ良く、クルクル回してからキャッチするつもりが取り落とし、ガッツポーズもしないとダメだし、拾わなくっちゃならないし、したいことが一杯あって、しっちゃかめっちゃか。
さて、お次はカップからボールを拾って・・・。
あら、ボールがない!!
ドタバタやっているうちに、同組の黄重坤(ハンジュンゴン)のキャディが、ピンを抜くついでに、拾い上げてしまったのだ。
「なんでひらう(注:拾うの関西弁)ねん!」。
自分で拾って、拍手喝采を浴びながら、ギャラリーに笑顔で応える筋書きだった。狂わされて、憤った。
ボールを奪い返して、もう一度やり直した。
自分の手でボールをカップに入れ直して、“ひらい”なおして、高々と右手をあげて、ようやくいったん気が済んだ。
「気持ちが出過ぎた。年がいってから、子どもみたいなった」とは、18番で決め損ねたバーディチャンスや、連続ボギーにした11番や12番など、「昔はあんなボギーはなかった」と、この日のコース攻略法を反省してのセリフだったのだが・・・。
このオフ、一念発起で始めた肉体改造で、若返ったのは身体だけではなかった。
この日は同組で回った驚異の飛ばし屋、ウォン・ジョン・リーにもスタートから、ライバル心むき出しだった。
谷口とリーが同じ組で回ると知ったI・J・ジャンや、デービッド・オーから前日に、散々言われた。
「ウォン・ジョンの2アイアンはヤバいよ!!」。
「・・・何がヤバいねん。2アイアンには、負けへんかったよ」と、言い返しても、ウォンジョンは、この日も相変わらずドライバーを使ったのは4番と5番だけ。
「もったいない。宝の持ち腐れや!」。
18番のパー5もまたスプーンで打ったリーに、「なんで刻むねん。刻むなら、その分俺にドライバー貸してくれ」と、刻んでなおイーグルを奪った飛ばし屋にも最後の負け惜しみを忘れず、最終日は最終組のひとつ前の“ラス前”に、滑り込んだ。
「今日は一瞬、失速したときには帰りたくなったけど、7番は今日もティが前で、チャンスをくれたので」。
隙あらば5打差から迎える最終日もまた無邪気に、大会2勝目を狙っていく。
「明日ハマれば、まだ分からない」。若い気持ちは誰にも負けない。谷口劇場はまだまだ終わらない。