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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2016
今年最後の直接対決
この「ゴルフ日本シリーズJTカップ」まで、もつれこんだ場合は毎年、その可能性のある選手が前日水曜日に会見場に一堂に介して、フォトセッションを行うのがここ数年の恒例行事になっている。
思いのほかなごやかなムードで部屋に入ってきた池田と谷原は、報道陣の要請に応えて優勝杯を前に素直に、背中合わせに仁王立ちしてポーズを取った。
池田がこういう場面に立ち会うのはこれが3度目である。
2009年。こういうフォトセッションが始まったそもそもの始まりであった。その年は石川に次ぐ賞金2位で、この最終戦を迎えた。
遼と勇太。対照的な2人が何かと、比べられた年でもあった。
さらに翌年は、庚泰 (キョンテ)と、石川に次ぐ3番目にチャンスを残した選手として、杯を囲んだ。
2年連続で、並々ならぬ思いで頂点をにらんだが、悲願はならなかった。
あれからちょうど5年。初めて賞金1位で迎えた2016年の最終戦。3度目の正直だ。
先週の優勝で、世界ランクはさらに上昇して37位に。年末の世界トップ50は濃厚で、もはや来年のマスターズは6年ぶり3度目の出場権もほぼ手中に「出るだけじゃなくて、戦うために調整したい」と、早やその自覚でいっぱいである。
「しっかり最後まで優勝争いして、優勝をして、ツアーを盛り上げることしか考えていない」と最後の締めこそ主役を張るつもり。
そして追いかける谷原だ。世界ランク56位でこの最終戦を迎えて、谷原にとっても初の賞金王も、10年ぶり2度目のマスターズも、どちらも本当に「勝つしかない。はっきりしていていいですね」。
泣いても笑っても、本当にこれが今年最後の戦いを、心待ちにしているのが長男の悠人くん。
5歳になる谷原家の大事な一粒種は、近頃ますます遊びたい病が盛んで父親が、賞金レースの真っ只中であることなどお構いなしで、今週もまた月曜日からトレーニングとケアに忙しいパパを恨めしげに見上げて、「またゴルフに行くのぉ〜?」。
「終わったら、いっぱい遊べるよ」と可愛い息子に請け合った。
今年2月に急逝した父親の直人さんは厳しかったが、一児の父は甘々だ。
初めてクラブを握ったころには直人さんに強制的に「やらされた」というゴルフ。プロゴルファーは実家の飲食店よりも楽だろう、と選んだ。でも甘かった。
「片山さんが“ゴルフは楽しい”というのを聞くと、すげえなと思う」。シード落ちした某後輩プロは「あのとき頭に500円ハゲを2つも。ゴルフは仕事。一番しんどいのはメンタル。俺がよう、プロになれたもんだと」。
勝てば逆転賞金王の可能性を残した賞金2位が、最終戦でしみじみとそんなことをこぼした。
38歳の体もあちこちが悲鳴を上げて、試合の合間に今は3つの病院をハシゴしている。激動の1年も、あと4日で終わる。