Tournament article
HEIWA・PGM CHAMPIONSHIP 2018
ノリノリノリスのV3
そのために、心暖まる祝福さえ聞こえなくなってしまったのは残念だった。
風に乗り、すり鉢状の18番グリーンに降り注いだ名物の指笛。
沖縄の人々が鳴らす魂の音色。
ひとつ前の片岡が、こちらもまた劇的なバーディで上がった時より格段に多かった。
「外国人の僕にも同様に声援を送ってくださったのは、本当に嬉しかった」。
1差つけられ迎えた18番で、南アのショーン・ノリスが感動のイーグル締め。
喜びのあまりに、大事な長尺パターも取り落としてしまった。
大きな手で顔を覆った。
身長188センチの大男が大粒の涙をこぼした。「最高に幸せです」。
太い腕で頬をぬぐい、噛みしめる姿に祝福の笛はしばらく鳴り止まなかった。
2日目に2打差の首位も、翌3日目は大雨で中止となり、54ホールの短期戦。追われる立場のまま迎えた最終日は序盤、いっこうにバーディが来てくれない。
前半9ホールはすべて、パーに終わった。
「ひとつ前でスコアを伸ばしてきた片岡選手を気にしながらのプレーだった」。
後半、やっと14番でこの日最初のバーディを迎えてもついに追いつかれた。片岡に逆転を許した。
1打差で迎えた最後のパー5は飛距離を生かして軽々と2オンを成功させても、それを外せばプレーオフという瀬戸際でだいぶ待たされた。
同組のY・E・ヤンが競技委員を呼んで救済の処置を取る間も「最後まで、集中力を切らさずやれた」。
イーグルトライは、7メートルの下りのフック。
「ボール4つか5つ分くらいは曲がる」。
プロキャディでもないのに、頼めばいつもどこでも駆けつけてくれる。
難解なラインも今週、バッグを担いでくれた大親友のチェイスさんと意見を合わせて雑念が入る余地もない。
2人でみごとに読み切り「チェイスのためにも勝てて良かった」とまた泣いた。
後ろ髪を引かれる思いで故郷を出てきた今週。
「飛行機で24時間もかけて戻ってよかった」。
日本ツアーは2週間の休暇を取り先月23日に、長男ジェイドンくんの出産に立ちあったばかり。
「本当は、ずっとそばにいたかった」。
おめでたムードの一方で、76歳になる父パトリックさんは病床にあることを思えばなおさらだった。
「2人のために、何かしたいという強い気持ちがあった」。
“産休明け”すぐに達成したツアー通算3勝目は愛しい我が子と最愛の父に捧げるためだった。
本来なら優勝賞金4000万円。54ホールの短縮に、75%の加算減額は残念だが「シューゴに少し近づいた」。
この勝利で、1位の今平に約2800万円差の賞金2位に。
年頭から狙っていた。「チャンスがあれば賞金王を獲りたいと思います」。
ここから予定の4連戦。シーズン最後にこそ愛する家族に賞金1位を捧げたいノリノリスである。