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ダンロップフェニックストーナメント 2020
今平周吾は、ひとり静かに策を練る
前半のインコースは、安定の賞金王にはありえないほど、ショットが曲がった。
今朝、スタートの1時間前に、ロープで隔離された専用打席で柏木キャディと落ち合った際には「体がフワフワしている」と言った。
前日は、自宅最寄りの新横浜から、博多で自前のハイヤーに乗りかえ約9時間の長旅。
「座っている時間が長かったので…」。
時差ボケに加えて「蓄積された疲れ」(柏木さん)。
今平も「ティショットで、左に曲がることは、今まであまりなかった」と、序盤は異例のミスを連発したが、左の林から強烈なフックをかけて、花道まで運んだ14番のパーセーブはさすがだった。
新幹線では隣と前後合わせて6席を確保。ハイヤーにはビニールシートがかけられやっとコースに来ても、クラブハウスに入れない。
唯一、接触を認められた柏木キャディもクラブの受け渡しで、グリップには触れないなど細心の注意を払い、毎ホールで手を消毒。
「指紋がなくなりました」と、おどけた柏木キャディは、「でも、一番最初にこういうのを経験させてもらえることになった。今後のゴルフ界、スポーツ界、オリンピックのことを考えると、前向きにやっていかないといけない」。
素手を避けた、ボールのタオルキャッチも「得意技です」と、異例尽くしの状況も楽しむ。
五輪の強化指定選手を対象とした、自主隔離の緩和措置(通称アスリートトラック)の適用第一号。
今平は、「本当なら2週間、隔離をしないといけないのを出させていただけることになった。ディフェンディングでコースの相性も良いので本当に出たいという気持ちがあったので、出させて頂いて嬉しかった」と、感謝。
日本オリンピック委員会(JOC)をはじめ、主催者、関係者など、多くの尽力があって実現した昨年覇者の出場だった。
例年、大会では使用されないパッティンググリーンをきゅうきょ、トーナメント仕様に仕上げていただいたのも、今平が密を気にせず練習できるように、との配慮から。
プレー中は、周囲と距離を確保するための警備員と、消毒用の大会スタッフなど計4人が随行するなど、ラウンド中の感染防止も徹底された。
その様子をひとつ後ろの組で見ていた宮里優作は「いいね、VIP扱いで。ウッズみたいで、いいじゃない?」と、賞金王の出場を歓迎。
米ツアーでは、すでに8月から入国後の緩和措置がとられるなどコロナとの共存に取り組んでおり「選手として、日本も早くそうなってくれればいいな、と思っていた。今回の周吾の例が、スタンダードになっていけば」と、話した。
「前半は体がいうことがきかなかったが、後半から体も上手く回ってくれて、良い感じになってきた」と、2ボギーで折り返したアウトコースで、3バーディと盛り返した今平。
「昨日も時差ボケで、夜に2回起きたりしたので少し疲れもあったんですけど、その中でオーバーパーを打たなかったので、とりあえずは良かった」と、安堵した。
プレー後は、すぐに宿に引き返して外食もできないなど「厳しいルールはありますが、その分部屋でゆっくりしたり、トレーニングをしたり、有効に使っていきたいです」。
ひとり静かに連覇の策を練るにも最高の環境だ。