泣いても笑っても
賞金レースも、ついに残り1日。
史上最大差からの大逆転賞金王がかかる。
偉業に挑む賞金4位の顔は青ざめていた。
通算7アンダーの4位タイで上がった星野陸也は開口一番、「いやあ…、ダメでした」と、無理に作った笑顔も引きつっていた。
「大事な1日」と、自覚して入ったこの日3日目。
4番でボギーを先行させた。
序盤はカップに嫌われた。
比較的、素直なラインのチャンスをことごとく逃していたのに突如、前半最後の9番からの3連続バーディは、「えげつなく曲がるラインばっかり」。
9番、「上って下る5メートルのめちゃくちゃフックが入った」。
10番は「8メートルの直角スライスライン」をねじ込んだ。
そして11番では「壁ドンパット」。
上って下る、7メートルの軽いスライスラインは強気のタッチと共に、急加速でカップに吸い込まれていった。
一時通算9アンダーまで伸ばした。
首位に1差と猛追した。
「なんとか、いい流れにできていたのに後半もったいないミスばっかり」と後悔が止まないのが、12番と16番のボギーだ。
「フェアウェイからバンカーに入れたのと、130ヤードのラフからフライヤーして、右奥に行ったのと。17番のバーディも消せないくらいのひどいミス」と、みるみる青ざめた。
「9アンダーまで行って、そこからチャンスホールが続く中で、逆に落としてしまった」と結局通算7アンダーまで落ちて、悔やんでも、悔やみきれない。
「3日目すごく大事と思っていた分、落胆が大きい」と、長身の肩が落ちた。
「(首位の谷原と)4打差に広がっちゃったので。こっちが伸ばさないといけない状況になった。悔しいですね」と、ため息が漏れたが、「追いかけられるより、追いかけるほうが気が楽」と、懸命にプラスの材料を捜した。
「今日は最後の試練と切り替えて。この大会で、優勝するのが第一の目標。明日は前半、しっかり伸ばして、トップの人にプレッシャーを与えるようなプレーがしたい」。
シーズン最終戦の優勝で逆転・賞金王に就いたのは、賞金ランク2位からの片山晋呉と宮里優作の2人だけ。
星野が賞金4位から、2356万715円差をまくれば前代未聞の大どんでん返しだ。
泣いても笑っても、残り1日。
偉業のチャンスを残して、落ち込んでいる時間はもうない。
なお、賞金レースを争う他4人の3日目の順位は賞金1位のチャン・キムが通算2アンダーの14位タイ。
「今日はもちろん、リーダーボードで星野選手が気になった。彼が勝てば賞金王だが、彼のプレーを自分はどうに出来ない。もし優勝したら素晴らしいゴルフをしたということだし、祝福したい。今になって初日の4オーバーがとても痛かったと感じるが、とにかく明日ベストを尽くして、結果を待つのみ」(キム)。
賞金2位の木下稜介は、この大会で勝つか単独2位が条件だが「今日はパットが悪かった」と、通算2オーバーの26位タイまで落ちた。
「ビッグスコアを出すしか道は残されていないので、優勝は 少し厳しいかもしれませんけど、可能性はゼロではない。全ホールバーディを獲る気持ちで あと1ラウンド 頑張りたい」(木下)。
今大会は優勝で、なおかつ賞金1位のキムが11位以下が逆転の条件の稲森佑貴(賞金5位)は「面白味のないゴルフだった」と、通算4アンダーにとどまり11位タイで最終日に挑む。
「上を目指すというより、自分のベストを尽くそうと思います」(稲森)。