フェアウェイ上で勝者の祝福を済ませた石川遼は、共にグリーンの手前まで歩いてくると、一歩下がって立ち止まった。
ギャラリーと共になり、大槻智春がカップインイーグルを達成したボールを拾い上げるまで、ずっと笑顔で拍手を続けた。
仲間の祝福でもみくちゃになるのを待ってから、そっとグリーンに上がった。
8アイアンで、自分が作ったチャンスをしげしげと眺めて「凄い良いラインでした。上りのまっすぐ。打ちたかったな…」。
苦笑いで幻のバーディパットを拾い上げ、「あのクオリティのショットを打たれたら、ただただ脱帽です」と、観念した。
勝者を主役にするため気配を消して、グリーンを去ろうとした2位の背中に気付いたファンから万感の拍手を浴びて恐縮しきり。
何度も頭をぺこぺこして降りてきた。
6差で入った最終日は雨と風。
「タフなコンディションだったので。スコアを伸ばせれば差は縮められる」と、スタートから3連続バーディで一気に駆け上がると、9番の連続バーディで首位に詰め寄り、13番の連続バーディで、逆転成功。
15番でジャンボ尾崎に並ぶ大会記録の通算20アンダーに一瞬、到達した。
2打のリードを作ったが、直後に16番で痛恨の3パットボギー。
「プレーオフで負けたというよりは、プレーオフに行かずに勝てるチャンスがあった」と、悔やんだ場面。
取り返しに行った次の17番では「判断ミス」もした。
ティショットをラフに入れた時点で、刻むつもりだったが「ライが良かったので。いいショットが出る確率を、多く見積もりすぎてしまった」という。
「ミスしたらあのショットになると分かっていたが、技術や状況判断が追いつかなかった」と、2オン狙いのショットは林の中へ。
バーディホールでチャンスを逃して土壇場の混戦を招いた。
31歳の誕生日週を、24歳の2015年以来となる大会2勝目で祝えなかったが36歳の池田と32歳の大槻と繰り広げた“三つ巴”は見応えたっぷり。
「勇太さんは体調が万全ではなかったかもしれないですが、強さは驚異的ですし、昨日今日と、経験を積んでいる選手が多かったのは、きっとそれが輪厚というコースなのだと思う」と分析し、「いまいろんな年代の選手たちが切磋琢磨しているのは間違いないですし、その中で1打を争えたのは嬉しかった」と、清々しかった。
「自分のスイングと感覚、フィーリングが徐々にコネクトし始めている」と、今季の自己ベストによる4度目のトップ10入りには手応えもある。
「これからのシーズン終盤が楽しみ。より次に弾みがつく1週間だったと思います」と、今季中の通算18勝目に大いに期待を持たせた。