井上は、2004年大会の覇者でもある。当時は、月曜日の予選会「マンデートーナメント」から優勝した史上3人目のプロとして脚光を浴びたが、早18年前。
「いつの話よ…」と、ため息を漏らし、「今は血圧の薬を飲んでます」と、苦笑を漏らすが、その後シードを行ったり来たりする間も見放さず、今年も推薦出場の機会をくださった主催者には、感謝にたえない。
今季レギュラーツアーは3試合目。
出場の機会はなかなかないが、近頃はツアー通算2勝の実力と、気さくな人柄を頼る若い選手が後を絶たない。
「ここ数年、よく話をするようになった」という後輩プロの諸藤将次(もろふじ・まさつぐ)は今週「マンデートーナメント」をトップ通過。
「スイングとか技術は教えないよ。俺より飛ばすしもう十分上手いんだから」と謙遜するが、「トラブル時の対処とか、心構えとかなら教えられる」とプロ24年の経験を、惜しげもなく伝授。
現在、開催中の女子プロテストでも教え子が何人か頑張っていると言い、「僕も今週は4日間はやらないと…。そこは最低限ね」と、まずは予選通過を自身に課した。
ツアー3勝の矢野は、一昨年のQTをトップ通過。
20ー21年の賞金ランキング45位で、右ひじの手術をした2017年以来のシード復帰でスポンサーを喜ばせたが、今季は予選敗退が12回。賞金ランキングはまだ93位と苦戦している。
45歳。
「シニア入りまであと5年。誰もが苦しむ時期」と、加齢との闘いを自覚する。
老眼による視力低下も悩みの種で「日没時が一番きつい」と、順延が絡んだ春先の大会では「上がり4ホールで3パットを3回も。ショートパットがまったく見えない」と、視力回復手術も検討中だ。
「これだけ、みんな一生懸命に練習して、いいスイングをして、飛んで曲がらない子たちが増えてきている中で、ちゃんとゴルフに向き合って頑張っていかないと、戦えない世界」と、いますごい勢いで押し寄せる若手の台頭は、もちろん痛感している。
「でも、それも楽しい」と、矢野はいう。
シード陥落時に始めたゴルフスクール監修や、動画チャンネルも順調だ。
「4歳と、2歳になる娘たちもチョー可愛くて。4歳の子は最近、ゴルフも始めたんだよ」と、目尻が下がる。
「若いときはゴルフだけ。それ1本でやってきたけど、今はツアーと、そうでない生活の両立が楽しくて」と、新境地を開いた。
「ツアーに出られなくなっても、自分には別の道がある」との心の余裕が、むしろベテランに前を向かせる。
「きちんと、自分のゴルフさえできれば50歳でも優勝できると思っている」と言い切れるのは、努力を重ねてきた自負と蓄積があるから。
「プロゴルファーなんで、しっかり成績残さないと話にならない世界。そのためにもまた、ここから自分のゴルフを立てなおしていくつもりです」。
ガツガツはもうしないけど、人生を諦めない。
2人のベテランホストプロに今、いい風が吹いている。