初日から、首位を快走する昨季賞金王のチャン・キムの通算スコア「22」は、大会がここ「Kochi黒潮カントリークラブ」に移ってからの最多アンダー記録(2009年小田孔明)を、すでに1打上回る勢いである。
1差の2位には、今季絶好調の岩崎亜久竜(いわさき・あぐり)。プロ2季目の初優勝を狙う。
さらに、4差の3位タイには、36歳の池田勇太(いけだ・ゆうた)と33歳の小平智(こだいら・さとし)が続く。
池田は、2019年の通算21勝から、もう3年も勝ち星が増えていない。
「今年も勝てそうで勝てなかった試合もいくつかあったし、しばらく優勝から遠ざかっているというのは、自分の中でもなかなかモチベーションに繋がらないというか、勝ってなんぼの世界。置いてけぼりを食ってるなー、という思いがある」と、率直な思いを語る。
若い子たちの勢いを、池田も痛感している。
「道具もボールもゴルフも進化して、自分の20代より今の20代のほうがぜったい上手いに決まっている。老いていく自分を感じる」と、素直に認めるが「老いを脱ぎ去り上回れるように。新たに練習して、勉強して。新しいものにしながら、自分の持っている技術も残して。まだまだ、やれるというところを見せなければいけない。考え方ひとつ」と、懸命にあらがい食いしばる。
10月の大会から口内に、アゴと体の治療具を装着する。
この日も、プレー後のテレビインタビューで、6番から続けた圧巻の5連続を説明する際にも「バーディ」と、うまく発音できずに、「バーデー…」と、言ってしまって、「しゃべり方が変ですみません…」と、詫びたがこれでも最初の装着時より慣れて、うまく話せるようになったほう。
「着けてプレーをすると、ショットで食いしばれない。20ヤードは飛距離が落ちる。こういう感じ、という自分のイメージが微妙に出せない」と、苦労を語る。
そうかといって、器具を外してプレーをすれば、また以前のように、体のあちこちに支障が出る。
「きのうきょうみたいな曇りの日は気圧の変動もしんどい。どーんとしてくる」と、プレーの合間に頭のセルフマッサージをしながら回った。
医師には、アゴが正常位置に戻るまで半年の辛抱、と言われており、そこからようやく歯の治療に入るので、おそらく完治までこれからほぼ1年。
「思うようにゴルフができない時もあったり、歳とともに体にもガタがくる」。
不便と、忸怩たる思いが続くが、「ほんの一瞬楽しめる時間だったり、納得のいくショットだったり、こうして人の前に立ってプレーできる喜びもあるし、それを積み重ねていくことが大事」と、苦しいからこそ声援に、背中を押される。
「若い連中みたいにのびのびプレーできないかもしれないけど、今の自分にできる最大限のプレーをしたいと思う」と、胸に期すのは36歳なりのV争いだ。
今大会は、賞金王に就いた2016年に、年間3勝目を飾った思い出深い試合だが、心残りは大雨で最終日が中止となったこと。
「今度は、4日間戦って、勝ちたい気持ちがあります。明日は、上がざわつくようなプレーで優勝できれば」と、3年ぶりの美酒へ思いが募る。