金谷拓実(かなや・たくみ)とのプレーオフ2ホール目。
2打目をグリーンの奥に落とした金谷に対して、中島はベタピンのバーディチャンスに成功。
「ウィニングパットは30センチくらい。気を遣う感じではなかったので。打つ前から感情が溢れて泣きそうでした」と、もう目を赤くした。
アマ時代から、背中を追い続けてきた尊敬する人。
「金谷さんとのプレーオフで優勝できたのが余計に嬉しい」という感激と、「どちらかが勝って、どちらかが負けるという」。
複雑な思いが交錯。
金谷は、2週連続の完全優勝がかかっていた。
相手の悔しさを思って打つウィニングパット。
2週連続2位の雪辱を3週目に晴らせた。
でも、ガッツポーズはできなかった。
最終日のV争いもやはり「会話はゼロ」だった。
だが最後の抱擁で「すごく良かったよ」と、金谷。
どっと涙が溢れた。
「金谷さんとずっと優勝争いしていたかった」。
ゲームセットを惜しんでまた泣けた。
一昨年の「パナソニックオープン」で史上5人目(現在は6人)のアマVを達成した時も、泣いていた。
自他共に認める泣き虫が、プロ初優勝でもまた泣いた。
「金谷さんとバチバチで争って、プレーオフで勝って。言葉では言い表せ合い気持ちです」。
3差を追って出た最終日。
「金谷さんの強さや怖さは僕が一番よく知っている。必死に食らいついた」と、前半最後の9番で追いついた。
12番で逆転。
金谷にバーディを獲られた14番でまた並んだが、「接戦は覚悟していた」と、15番ですぐバーディを奪い返して首位に立ち、16番では右林に入れる窮地をパーセーブ。
17番では今週の初ボギーで逆転されたが、本戦最後18番のバーディで再び追いつくことができた。
「ああいう負け方は、お金で買えない経験ができる」と、片山晋呉(かたやま・しんご)に言われたのは2週前の「ミズノオープン」で、同学年の平田憲聖(ひらた・けんせい)にプレーオフで負けたあと。
「ミスにつられない。切り替えが上手くなっている」。
2週連続2位の雪辱を果たして片山の言葉を実感する。
連覇をかけて、プロデビューを戦った昨年9月の「パナソニックオープン」で同学年の蟬川泰果(せみかわ・たいが)が中島に次ぐ史上6人目のアマVを達成。
さらに蟬川は、翌月の「日本オープン」で史上初のアマ2勝で転向し、今年の「関西オープン」ではプロ初勝利も飾った。
しかし、「そこで焦る自分はいなかった」と中島はいう。
「自分のゴルフを続けていれば勝てる」と信じ、コーチを、トレーナーを、チームを信じ、昨夏の扁桃炎で、65キロまで激減した体重と体力の回復に注力。
転戦中も週3の鍛錬を欠かさず、今はベストの77キロを維持する。
祝福に来てくれた日体大の先輩、河本力(かわもと・りき)とは「月、火、水と焼き肉で、木曜がジンギスカン。そのあと焼き肉」と、要は毎日、肉尽くし。
スタミナは十分だが、最近、ちょっぴり気になることが。
「朝ご飯があんまり食べられない。よく考えると夜の焼き肉が原因と。もう少しヘルシーなものを食べたいな、と昨日ぐらいから思ってました」。
さっそく祝勝会で提案してみよう。