Tournament article
久光製薬KBCオーガスタ 1999
「あのひとは神」2位タイの芹澤信雄
「午前中はテニスラケットやバットで左手強化のトスバッティングをしたり、スクワットや腹筋・背筋を中心にしたトレーニング。昼は練習場で打って、夕方にハーフラウンドという生活を1週間。体を作って、曲がらないスイング作りに重点をおいたんだ。夏にキャンプをするのは初めてだったよ」という芹澤を発奮させたのは、ツアーの“夏休み”直前の大会、新潟オープンで初日、2日目を同組でラウンドした御大・杉原輝雄だ。
“飛ばない”プロとして有名な芹澤も、ここ何年かますます伸びる、ツアーの平均飛距離にギャップを感じ、「練習場では抑えたうち方をしていても、コースに出ると目一杯振って、独自のスイングを壊していた」(芹澤)。
追い討ちをかけるように、5月の三菱自動車トーナメントで、プレー後のストレッチ中に、軽いギックリ腰。その場で、徹底的にアイシングを繰り返し、なんとかことなきを得たが、「翌週の試合からスイングするのがこわくなっちゃって5試合連続予選落ち。ぼくも40歳だし、もうだめだ。引退かな…とまで考えたんだ」と振りかえる。
悶々とした気持ちでいた矢先に、杉原にこう言われて開眼だ。
「ぼくが芹澤君ほど飛ばせたら、もうひとつふたつは勝てるで」。
これには芹澤もたまげてしまった。
「思わず、『ぼくの飛距離でほんとにいいんですか』って聞いちゃった。そしたら、杉原さんは『そうや、キミはアゲンスト風のなかでもちゃんとパーオンさせられるやないか。それでなんで勝たれへんねん』って言いかえされたんです」。
自信になるとともに、杉原の強烈なプロ根性に触れて改心。回りに流されず、目的をしっかり持って、キャンプで徹底的に鍛えなおすことに決めたという。
「尊敬する杉原さんの言葉でやる気がいっぱい出た。神の声に聞こえましたよ。ぼくはドライビングディスタンスはビリでいい。それより丁寧に丁寧に取っていく。それが結果につながるんです。杉原さんの言葉を信じて頑張ります」。
飛距離へのこだわりを完全に捨てた芹澤の、残り64ホール(予定)が見ものだ。