Tournament article
東海クラシック 2000
ツアープレーヤー1年生、今井克宗
4番パー4。ティショットを左ガケ下のバンカーに落とした。アゴが高く、前方は植えこみに遮られ、ピンは見えない。
バンカーに下りてショットを打つ直前。今井克宗は、ロープ際の人物にチラっと視線を送ってから、第2打を冷静にフェアウェーの真ん中に出した。
「今井さん!! ナイスショット!」
その声に、今井は小さくうなづいてみせてから、コースへ戻って行った。
ロープの外にいたのは、ツアープレーヤーの今野康晴だった。
今野は数週間前に痛めた脇腹痛で、クラブが振れる状態ではなく、今大会を欠場していた。だが、最終日・最終組という人生初の大舞台で、極度の緊張状態にあった先輩をロープの外から見守るため、コースからほどちかい岐阜県・恵那市の実家から、急きょ、駆けつけたのだった。
「今野が18ホール、ついて歩いてくれた。ピンチに逢うたび、今野の姿を捜した。今野が見てくれている、とわかると、安心してプレーに集中できた」と今井。
その4番も、第3打をピン手前5メートルに乗せて、それをねじこみパーセーブ。
他に1番で1メートル、5番パー3では右がけ下バンカーに落としながら80センチに寄せてパー。6番では5メートルのもパーパットを沈め、7番パー5でこの日初めてのバーディが来るまで、じっとピンチに耐えしのんだ。
「昨日の夜は、お酒を飲まずにはいられなくて、でも、飲んでも飲んでも酔えなくて、眠れずに苦しかった。今日は本当に緊張してずっと息が荒かった」と振り返ったが、今年初めてQTによるツアー出場権を得て、本格参戦したばかりのツアープレーヤー1年生は、イーブンパーでまわって通算9アンダー、3位タイと大健闘。
賞金580万円を積み上げてランク58位にのしあがり、来季のシード権をほぼ手中にした。
しかも、今大会で今年から設定されていた“新人賞”100万円も獲得し、二重の喜び。
「満足です。すごいプレーヤーの方たちの中で、自分もよくやったと思う。自信になります」と今井は頬を紅潮させた。
★ 今野はこの日、普段歩いたことのないロープの外からの観戦で、「こうして応援しながら歩くだけっていうのも、けっこうキツイですね」と汗を拭いながら、今井の好プレーに精一杯の拍手を贈っていた。
今井と今野は、ツアーの資格を得る前に、アメリカで武者修業中に知り合って以来の良き先輩後輩で、いまも、普段から一緒に練習をするなど親交を深めている。