Tournament article
ダイヤモンドカップトーナメント 2002
「みんなの声は、届いていたよ!」
会場に居合わせた7032人のギャラリーは、やがて、ひとつの思いで、まとまりつつあった。
「トミー!!何とか、勝ってくれ!!」
ロープの外から浴びせかけられる、力のこもった声援。それは、中嶋が18番グリーンにやって来るころには、最高潮に達していた。全員が、7年ぶりの優勝を、心から待ち望んでいた。
2メートルのウィニングパットを決めた瞬間、そんなギャラリーの思いは、一挙にはじけた。
「トミー!! オレにもパワーをください!!」
「これからも、もっともっと、勝って!!」
「最高に、かっこいいよ!!」
満員のスタンドから、今度は次々と、祝福の声が飛ぶ。
そのひとつひとつに中嶋は、帽子を脱いで、何度も何度も、頭を下げた。
「みなさんの声援が、最後のパットまで、導いてくれたんですよ!!」
本当ならば、プレー中も、ファンの声に、手を挙げて応えて歩きたい気持ちでいっぱいだった。
だが、「いや、この期待には、ゴルフで応えるほうが先」と思い直し、目の前の1打に、集中した。
「たったひとりじゃ、ここまでやれなかったんです。みなさんが諦めずに応援し続けてくれたから…。みんなの声は、胸にしっかり届いていましたよ!!」
中嶋からの感謝の言葉に、感極まって、涙にむせぶ人もいた。
割れんばかりの拍手は、いつまでも鳴り止まなかった。
ギャラリーの手にもみくちゃにされながら、中嶋は、クラブハウスへと通じる道を、歩いた。