Tournament article
ダイヤモンドカップトーナメント 2002
「優勝争いしてこそ、生きている実感を味わえる」
「もうあとは、長男の雅生にバトンタッチしようか・・・」とまで思いつめたのは、一昨年夏。
シード奪回に燃え、全力でぶつかった7月の新潟オープンであっけなく予選落ち。
「これ以上、やっていても仕方ないんじゃないか…」選手人生を、諦めかけた時期でもあった。
そんな中嶋をもう一度、奮い立たせてくれたのは、「優勝争いをしてこそ、生きている実感を味わえる」という熱い思い。
再び頂点を極めるため、試みたさまざまな取り組みの中で、最も成果をあげたのが、専属トレーナー・石渡俊彦さんの起用だ。
元プロゴルファーで、かつて中嶋の弟子だった石渡さんは、背中の故障で、選手生活を断念。トレーナーとして再出発し、昨年オフに中嶋を訪ねてきた。
少し話をして、石渡さんの感性に共感を覚えた中嶋は即、採用を決め、二人三脚が始まったのだ。
「あいつの存在は本当に大きかった」と、てらいもなく、中嶋は言う。
「オレはトレーナーとしてのあいつを尊敬し、あいつは、選手としてのオレを、尊敬してくれている。上下のない良い関係で、やりとりがしっかりできる。彼のお陰でフィジカルとテクニカルの融合が、実現できたんだ」
今週も、肩の痛みを訴える中嶋に、石渡さんは、『バランスボール』というビニール製の大きなボールを使った、ユニークなトレーニングメニューを提案。
早速、中嶋は、自宅に届いたそのボールに腰掛けたり、身体をもたせかけたりして、回復を図った。
「オレが“身体の調子が悪い”と訴えると、すぐにそれに合ったメニューを提案してくれる。安心して、任せられる」
この信頼関係が、7年ぶりのVを導くひとつの原動力となったことは、間違いがない。
★ 石渡俊彦トレーナーの話
「今日の最終日は、僕は仕事で会場に行けず、変わりに、中嶋さんの試合展開は、応援に駆けつけた僕の生徒が、毎ホールごとに知らせてきてくれました。
だから、結果はあらかじめ知ってはいたのですが、改めてテレビ放送で中嶋さんの表情を見たときに、『これは、勝てる』と感じました。
いま、中嶋さんの身体の状態が万全ではないのは、トレーニングメニューの変更を求められていたりしたので知っていましたが、あの表情を見て、安心するとともに、7年ぶりの優勝を、確信できましたね」