Tournament article
久光製薬KBCオーガスタ 2002
「一番て、ほんと気持ちがいい!」
最初は、「安易な気持ちで」目指した、ツアープレーヤーへの道。
その“世界”で、初の首位に、高橋は「いやあ、ほんと、気持ちいいもんですねえ、“一番”て…」と、満面の笑顔。
台風15号の接近で、徐々に風が強くなる中、ショットが冴えた。
前日の練習日のうちに、ダウンスイングでクラブが寝て下りてくるクセを修正。
アウトサイドの軌道を心がけたことでショットが安定し、この日はミスらしいミスもなく、「球はほとんどピン方向に飛んでいった」。
14番では、10メートルのバーディパットをねじ込むなど、パッティングも好調で、もともと、「波に乗ればガンガン行くタイプ」という高橋のゴルフが、ハマった。
ツアー自己ベストの67をマークして、「明日からも、気合いを入れていく」と、すっかり、その気だ。
髙橋が初めてクラブを握ったのは、19歳のころ。
それまでは、ゴルフにまったく興味がもてず、東京学館浦安高時代は、中距離の陸上選手。
そんな髙橋が“本気”になったのは、卒業後、1年浪人したものの大学受験に失敗し、将来を考えて「なんとなく」、研修生を募集していたとあるゴルフ場の門を叩いたときだった。
そこでのテストラウンドが、髙橋のコースデビュー。
打撃練習しか経験がなく、ごく基礎のゴルフマナーも知らない髙橋は、パー3で前組に打ち込むなどの失態を重ね、そこで、選手としての不適正マークを押されてしまった。
「おまえは、プロに向いてない」
一蹴されて、コースを追い払われ、そこではじめて、髙橋に反骨精神が湧き起こったのだ。
「絶対にプロになって、見返してやる!」
そんな経緯があったからこそ、この日の首位には、感慨深いものがあった。
ファイナルQTランク36位の資格で参戦した今シーズン。
出場10試合中、予選通過はタマノイ酢よみうりオープンのわずか1回だけ。今大会のあとの後半戦に、出場できる見込みが少ないことも、今週の髙橋の発奮材料となっている。
「今日は、その気になれば、僕にもできるって、少し実感できた。明日も、ガンガン、ピンを狙っていきますよ」
興味本位で踏み込んだ勝負の世界に、今は、すっかりとりこになっている。