Tournament article
サン・クロレラ クラシック 2003
『プレーオフに残れだけでもラッキーでした』慌しくのぞんだプレーオフ、その1ホール目に勝利を決めてもブレンダン・ジョーン ズはガッツポーズをしなかった
イーグルトライの前に、キャディのマイケルが、グリーンサイドのドリンクコーナー から、ペットボトルの水を、調達してきてくれた。あんまり慌ててプレーオフにのぞ んだもの だから、ティオフの前にスナック菓子をほおばっただけで、何も口にしていなかっ た。
喉を潤すと、緊張が少し和らいだ。
ボールは、左から右、さらに左に曲がって急スピードで下る難しいラインをたどっ て、 2メートルのバーディパットが残った。対する丸山も、手嶋もアプローチからのバー ディチャンスを外した。
「まさかのぞめるはずもない」と思っていたプレーオフで、いまこうして自分は戦っ ていて、しかも最後のチャンスを残している。「それだけでも、ラッキーだ」。バー ディパッ トは、先の本戦の18番よりもほんの少し、気楽に打てた。
ウィニングパットを沈めても、ガッツポーズはしなかった。この数十分間、あまりに も慌しく過ごしただけに、そんな気力も残っていなかったし、「何より、丸山さんに 済まない気持ちも少しあったし・・・」昨年のこの大会で、アマ時代は負け知らずだった自身 も、はじめてプレーオフで敗れていただけに、リベンジ達成の瞬間も、ただマイケル と握手で肩をたたきあうだけにとどめ ておいた。丸山の気持ちが、痛いほど理解できたのだ。
この日72ホール目には完全に、「丸山の優勝だ」と確信していた。優勝カップを受け 取っても、まだ自分が勝ったことが信じられず、「不思議な気分」とつぶやいた。
この日都内で一夜を明かすことになったのは、嬉しい誤算。今年12月に結婚予定の婚 約者、アデル・シンプソンさんにはツアー2勝目と、優勝賞金2600万円の思いがけな いビッグな土産を手に、翌月曜日に改めて、1日遅れの帰路につく。