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三井住友VISA太平洋マスターズ 2006
中嶋常幸が4年ぶりの優勝
「若いときには感じなかったもの。今だからこそ、心に沁みるもの」。
この日最終日はまず、前日の第3ラウンドに残した1ホールを消化。
ほとんど、休む間もなく最終ラウンドに突入した。
7時20分の競技再開に合わせて、早朝4時起き。
ホールアウト後、思わずつぶやく。
「きつかった・・・。最後までよく持った」。
スタート前、合わせて1時間のストレッチで備えたものの過酷な1日に、途中から持病の背筋痛が出ていた。
「今週で、俺の今年は終わりかもしれない・・・」。
そんな不安を覚えたが、ラウンドの合間にも前屈運動や、次打地点までの軽いランニングを取り入れながら、どうにかしのいだ。
痛みにもじっと耐えて戦う姿。
寄せられた言葉は、みなどれも共感に満ちて、暖かかった。
「“オヤジ、頑張れよ!”とか、中には“おじいちゃん頑張って!”というのまで・・・(苦笑)。あり難かった」。
そんなファンの声を糧にして、19ホールを戦い抜いた。
52歳と23日目の優勝はツアー制度施行後、3番目の年長記録。
「中年の星」と呼ばれることも嫌いではない。「むしろ、希望にしてもらえるのは嬉しい」。
しかしその一方で「ゴルフに年齢は関係ない」と言い切れる強さは、そう思える準備に日々余念がないからだ。
技術は年齢とともに、上がっていると自負できる。
「でも勝つことは、年々難しくなっていく。技術を表現できる体力あってこそなんだ」。
そう肝に銘じ、今年は出場試合を絞り込み、その分「若手と伍して戦える体作り」に特に時間を割いた。
「でも、この年齢できついのはかえってダメージが残るから。それは、まるで薄皮を1枚ずつ外すような・・・。若い人たちとは違うやり方がある」。
オフは1日4時間にも及ぶ、シニアなりのトレーニング法を手探りし、まずは飛距離の維持に専念した。
「だから、寄せワンではない。若手にも負けない。力のゴルフができる」。
今週、堂々9位のドライビングディスタンス(4日平均292.75ヤード)こそ、その証し。
会場に来ても人目をはばからず、2歳になる孫に癒される好々爺を演じながら、実は虎視眈々とこの日を伺っていた。