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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2006
中嶋常幸「いつまでも中年のアイドルでいたいんだ」
「あれ、こんな形だったっけ・・・?」。
時代とともにそのデザインは変化をとげて、出場選手の顔ぶれもすっかり変わってしまったが、その中に混じり、52歳の最年長として再びこの舞台に勝てたことが誇りだ。
11月の三井住友VISA太平洋マスターズで4年ぶりの優勝を飾り、今大会の出場権を獲得したものの、実は半分諦めていた。
12月も間近。寒空の下の戦いに、持病の背筋痛はますます悪化する恐れがある。
「やめておこうか・・・」。
そんな思いがよぎった矢先に、自宅に届いたたくさんのファンレター。
都内で行われる唯一のトーナメントに「ぜひ応援に行くから頑張ってください」。
どの手紙にも、中嶋の出場を促す激励がしたためられていたのだ。
そんな声に後押しされて、「しっかりと休養を取って、トレーニングをして、痛みがなくなったら出よう」と決めた今季最終戦。
自身22回目を数える頂上決戦。
スタートに立つなり、期待を直に感じた。
「俺のプレーを、喜んでくれる人がいる。頑張って出てきて本当に良かった」。
気持ちの充実感が、この日の好スタートにつながった。
9番パー4。残り151ヤードの第2打で握ったのは8番アイアンだ。
いまや「師匠」とまであがめるタイガー・ウッズから盗んだ技。
2週前のダンロップフェニックス。ウッズは、6番アイアンのフェースを思い切り開いて、170ヤードの目標に向かって何球も打っていた。
「彼なら9番アイアンで良いところ。アイアンは、飛ばすクラブじゃなくて。そういう練習でスイングが洗練される。スイング全体が滑らかになる」。
その積み重ねが彼を世界一にまでしたのだと、改めて実感できた。
さっそく、自分も取り入れることにした。
「そのほかにも、10番とか12番とか13番とか・・・」。
この日初日はウッズになりきって、コースを攻めた。
「おかげで、良いショットが続いたよ。狙ったところに真っ直ぐついた」と、無邪気に笑った。
背中は相変わらず痛む。
「・・・三味線を弾いておかないと、負けたときの言い訳が出来ないからね」と笑わせながら、それでも1打差の3位タイは十分に狙える位置。
「いつまでも、中年のアイドルでいたいからね!」。
今季2勝目で、その“地位”を不動のものとする。