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UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2006
中嶋常幸「中年の星は俺!」
ハーフターンの10番で、ピンチを迎えた。ティショットは右斜面。フェアウェーに出すしかない。残り110ヤードの第3打をピッチングウェッジで手前2.5メートルにつけて、これを沈めた。
「このパーセーブが後のバーディを呼び込んだ」。
そして突入したバック9は「別人のゴルフ」だ。
圧巻は、「はじめの計算ではボギー、ボギー」というほど難しい上がり2ホール。
池がらみの17番パー4でティショットを340ヤード飛ばすと、第2打を1メートルにピタリとつけた。
ここのティグラウンドは今年、左に移動された。
昨年までこのホールは「左林の上をドローで打つか、左からスライスを打つかしかなかった」。だが、これによって中嶋には「フェードボールでフェアウェーセンターを狙えるようになって、ティショットのライン取りが楽になった」という。
コース改良の恩恵をしっかりとモノにしたベテランは、最終18番でも手前1.5メートルにつけて連続バーディ。
総距離7179ヤードのコースでも、若手と渡り合えるのはたゆまぬ鍛錬のたまものだ。
「練習の半分の時間を当てる」というトレーニングで、飛距離はいまだ衰えを見せない。
そこに遜色さえなければ、あとは経験で若手を凌駕することも可能だ。
今季はスケジュールに無理をせず、余裕を持たせて参戦している。
日本ツアーはこれが3試合目。
日本のシニアは1試合、アデランスウェルネスオープンで4位タイにつけた。
米シニアは今季初戦の全米プロシニア選手権で6位に入るなど、効率良く成績を上げている。
試合に出ない週は講演会の依頼を受けたり、アマチュアとのラウンドを楽しんだり・・・。
新しい境地を見出している51歳。
上機嫌でホールアウトするなり、1歳8ヶ月になる孫の愛ちゃんのところに駆け寄って頬にキス。
「可愛くって食べちゃいたいくらい」。好々爺の一面を覗かせながら、戦う男の闘志は失っていない。
昨年の日本シニアオープンを制し、“日本”と名のつく公式戦をほとんど総なめにした。
残るは、この日本ゴルフツアー選手権。
「・・・ぜひ欲しいね」。
勝てば、ゴルフ人生のひとつの総仕上げともなりそうだ。