Tournament article

日本プロゴルフ選手権 2007

井手口正一「母の日はいつでしたっけ?」

前年度のチャレンジトーナメントランク1位の資格で、翌2006年にツアー本格参戦を果たし、今年みごと初シード入りを果たした井手口は、いつしか「チャレンジの星」と呼ばれるようになったが、「変わったことといえば、結婚したことくらい」。
生活は以前とまったく変化ない。

チャレンジ時代は、愛車のワゴン車エルグランドが遠征の“足”兼“宿”代わりだった。
経費を切り詰めるために、風呂は近くの健康ランドを利用した。
食事は300円の朝定食。

そんな節約生活は、新婚のいまも続いている。

開幕から3戦は、3月に式を挙げた史穂さんと一緒に転戦した。
「それが新婚旅行代わりだよ」と、平然と言う夫に呆れつつ、史穂さんはときどき運転を代わってくれたりする。

「楽になったのは、そのことくらい。シードを取ったからと言って、いきなり贅沢できるものでもないんですよ」と笑う。
今週の宿は、インターネットを検索して、コース近くの恩納村に見つけた1泊2500円。資格認定プロの父・一幸さんと宿泊している。
「いつかもっと良いところに泊まれるように…。今年は、もっと稼がなくちゃという気持ちにさせられる」。
井手口にとって、チャレンジ時代に培われたハングリー精神が何よりの原動力だ。

今年はもちろん、ツアー初優勝が目標だ。
「プロゴルファーになる」と宣言した10歳のときから、苦労のかけ通しだった両親の恩にも報いたい。
特に、美容室を切り盛りしながら資金援助してくれた母・シゲ子さんには、今でも頭が上がらない。

このプロ日本一を決める大会で、2日目に68をマークした。
前半の3番で、第3打をグリーン奥の砂混じりライに打ち込んで、ダブルボギーを打ちながら盛り返した。
最終18番の第3打は足だけバンカーの外に出して打つ不自然な姿勢にもかかわらず、ピンに当てるスーパーショット。60センチにつけて、バーディで締めくくった。

予選ラウンドを終えて、通算5アンダーは単独2位タイにポツリ、と言った。
「母の日は、いつでしたっけ・・・」。
それは、最終日の13日日曜日。
「ちょうど良い感じですね」と笑った。

    関連記事