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UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2008

星野英正、初メジャー制覇への道のり

13歳でゴルフを始めてからというもの、父・尹浩鎮さんの厳しさと言ったら半端ではなかった。1カゴにつき700球は入っていただろうか。毎日、カゴ2杯分のノルマを課され、少しでもサボったり、数をごまかしたりすると、ものすごい雷が落ちたものだ。

そんな父のスパルタ指導は、高校を卒業するまで続いた。
耐えかねて、「もうやめたい」。そう思ったのも、1度や2度ではなかったという。

その日を振り返りながら、18番ホールで息子のプレーを見守った尹さんは、「厳しくしすぎたかもしれない」と苦笑したが、30歳を迎えた今なら星野にも、そんな父の気持ちが分かる。

それは紛れもない愛のムチ。
「息子をそんなに叱るのは、親父もつらかったと思う」。
だからこそ、こう思う。
「あの日々を乗り越えたからこそ、今の僕がある。親父には、心から感謝している」。

過去2勝の経験がありながら、尹さんと母・喜美江さんに優勝シーンを見てもらうのは、これが初めてだという。
尹さんは、言う。
「息子のプレーを見ていると、一人でカッカ来ちゃってこっちが気持ち悪くなってしまうんです。それでなおかつコケたり(負けたり)すると、もうぶん殴りたいような気持ちになってしまって・・・」。

あまりにストレスがたまるから、これまで尹さんは、あえて息子の観戦を避けることが多かったそうだが、この日ばかりは「最後まで安心して見ていられた」。
そればかりか、この難コースで堂々と戦い抜いて、ツアープレーヤーNO.1の座についた選手が「ほんとうに、自分の子なのかなとも思えて…」。
息子の勇姿に、感極まった。

アマタイトル52冠をひっさげて、2000年にプロデビュー。
同時に億単位の契約金を発表するなど、将来を大いに期待された。
すぐにも優勝かともてはやされたが、周囲の重圧と自身への焦りからツアー初優勝は2003年と本人も思いのほか時間がかかった。

その間に故郷の宮城県を離れ、関西で一人暮らしを始めるなど「プロになってからも、両親にはつらい思いをさせてきたから」。
また昨年のこの時期には原因不明の病いに倒れただけに、心配かけどおしだった2人の前で勝てたことがなおさら嬉しい。

「…良い親孝行が出来たかな?」。
周囲のスタッフに「ヒデは笑うともっと良くなる」と言われるほど。
普段は超がつくほどクールな選手が珍しく見せた、こぼれんばかりの満面の笑顔は、支え続けてくれた両親の目の前でタフなコースを制し、頂点に立ったことへの喜びと誇りに溢れていた。


  • 初めて両親の前で優勝シーンを見せたツアー通算3勝目は、初のメジャータイトル!!

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