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サン・クロレラ クラシック 2008
谷口拓也が再び抱いた野望は
それで、いつも序盤は出遅れるのが、これまでのパターンだった。
加えて、今年は5月の中日クラウンズでひどいアレルギー症状が出て、大会「3日目に病院送り」。
点滴やら投薬でどうにか抑えたものの、ますますの出遅れが懸念されたが、そんな不安を払拭するために、谷口が取った策はハードなウェイトトレーニングだった。
ゴルフに隆々の筋肉はむしろスイングに邪魔になる、とは大方の見方だが「海外の選手を見てくださいよ。いまはみんな、パワーゲームでしょう?」。
豪快な飛距離も、深いラフからの脱出も「技術より、まずパワー」が谷口の持論だ。
6月から、週に4、5回のペースで都内のジムに通い、身体を鍛え抜いた。
同時にドーナツやケーキ、チョコやアンコ、フルーツなど「大好きな甘いもの」をすべて絶ち、サラダとサプリメント中心のダイエットメニューをスタート。
おかげで、体重は約5キロ減。
体脂肪も20%から14%まで減った。
かわりに筋肉量は増加して、たくましく生まれ変わった。
飛距離も10ヤードは伸びて、「クラブも半番手は飛んでいる」。
屈指の難コースで4日間、安定したプレーを続けられたのもそのたまものだ。
東北福祉大のひとつ上の先輩、谷原秀人にも「いつもは秋口からなのに。今年は早いじゃん? ショットは良いし、パターも入ってる」との賞賛を受けて、ますます自信が深まった。
早いうちに結果が出たら、目標にしたいのが以前から切望していた欧州ツアーへの挑戦だ。
たいていの選手が米ツアーへの参戦を口にするが、谷口は週替わりで国を渡る生活のほうに、より魅力を感じるという。
「僕はコメがなくても生活できるタイプだし、アフリカでもどこでも世界中を旅してみたい。試合があるところなら、どこにでも行きたい」。
そんな経験が、必ず自分を強くしてくれると思うからだ。
秋口の賞金ランク上位者には同ツアーの予選会・Qスクールの出場権が与えられるが、締め切りまでに、その条件に届いた年はこれまでにほとんどなかった。
また過去に一度、挑んだこともあるが、翌年の出場権が与えられる順位にはとうてい届かなかった。
「今年は早いうちに結果が出せたから。ぜひ、もう一度挑戦してみたい」。
このツアー通算2勝目が、29歳の胸に再び野望を抱かせた。