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三菱ダイヤモンドカップゴルフ 2009

中嶋常幸「このコースは経験がものを言う」

インタビュールームで苦笑混じりにつぶやいた。「みんなにはわかんないと思うけど、今は若いときのリズム感がないんだよ」。

この日のプレーを振り返る際に、ちかごろめっきり物覚えが悪くなったことにも触れて、「昔は18ホールどころか初日から辿れたもんだけど。今は、脳細胞が死滅したのか昨日のことすら思い出せない」と、笑わせた。

しかも3月に、原因不明の頭痛とめまいに襲われて、オフの調整が狂ってしまった。
今季初戦の先の中日クラウンズは、「真っ白い体と、マメのない手」で臨み、2日間で4つのダブルボギーを打って、予選落ちしている。
まだまだ本調子ではない上に、本人には54歳という年齢は無視できない。

「中年の星から熟年の星になろうとしているのに・・・。この位置でホールアウトしているのは、自分の中ではあり得ないこと。奇跡だよ」と、中嶋は言った。
その要因は先週、「ハレー彗星のように思い出した」というアプローチだ。

この日の18番も、残り190ヤードの第2打は「普通なら簡単に乗せられる距離」だった。
しかし「大ダフリして、左のエッジまで行かなかった」。
だがそれをカバーして有り余る寄せ技の妙があった。

「少年のころの感覚を思い出した」というひらめきを再現したら「ことごとく成功している」。
この日は13番でも寄せワンのパーを拾い、15番、17番ではチップインバーディ。
15番は、初日にも直接入れている。
「僕のこと、天才って呼んでくれる?」と胸を張ったが本人のアピールなくとも、すでに周囲が認めるところだ。

大会最多の4勝を誇る。
3勝目の1986年は、やはりここ大洗ゴルフ倶楽部が舞台だった。
埼玉県の狭山ゴルフ・クラブで行われた2002年大会は、長いスランプを抜けて7年ぶりの復活優勝を飾った。

「毎年楽しみにしている大好きな大会で、そして大好きなコースで明日も最後まで忍耐強く回りたい。そうすれば、少なくとも自分が満足する結果が得られるかな」。

そして最後に「このコースは経験がモノを言う」と言い切った中嶋が、最終日最終組でツアー通算49勝目を狙える位置にいることは、本人が思うほど奇跡でもなんでもないのだ。

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