Tournament article
ANAオープン 2009
中嶋常幸「大好きな全日空で」
「3番、8番以外はすべてバーディチャンス」という好調ぶりは、中でも特に強調したかったのは520ヤードの5番パー5だった。
ティショットはフェアウェーの「ど真ん中」を捉えながら、忽然と小さなこぶが出来ている箇所で、「そのこぶにスタンスがかかり、球も上げにくい難しいライだった」という。
ツアー通算48勝の男も思わずうなる状況で、しばし思案の末にひらめいた。「そうだ、今日メーカーから届いたばかりの7番ウッドで行ってみようと思った」。
それがドンぴしゃにハマった。
185ヤードの第2打は、「まるで7番アイアンで打ったよう。ほれぼれするショットは、完全にピンに筋ってたよ」と、得意満面。
念のため補足すると、“ピンに筋ってた”とはつまり、カップに向かって真っ直ぐに飛んでいったということ。
会心のショットは奧8メートルに2オンして「このバーディが大きかった」と、胸を張る。
先のシニアツアー「コマツオープン」は3日間で、フェアウェーを捉えたのはわずかに9回。
「それはなんでもひどすぎる」と、エースキャディの金本洋人さんと今週になって「アップライトすぎたスイングをフラットに調整」したことで、「今日はかなり良い感じで打てていた」と、手応えのあるラウンドだった。
左腕のテーピングをそっと撫で、「この肘が痛くなければ、今日は59は出ていたよ」と、冗談交じりにうそぶいた。
今年は、怪我に泣かされ通しだ。
オフのトレーニングで脇腹と肘を痛めた。そのために、セガサミーカップの9位が最高で、「今季まともに試合が出来たのは、まだ3試合しかないんだよ」と嘆く。
脇腹はほぼ完治したが、肘はそのセガサミーカップで悪化させてしまった。
痛みをこらえながらのこの日のラウンドも、5アンダーの好スタートに、自然と口も滑らかになる。
舞台は、なんといっても昨年も4位に入った「大好きな全日空」だ。
ANAオープン最終日の表彰式で行われる恒例の記念撮影に早くも思いを馳せる。
「今年はぜひ、最終日に“キャビンアテンダント”のみなさんに囲まれたいなとひそかに思っている54歳でした……!」。
お決まりの笑いを誘って、初日の会見をひとまず締めた。