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カシオワールドオープン 2009
石川遼が首位タイに
片山晋呉との初の同組対決は、2年前のゴルフ日本シリーズJTカップ。その年、ツアー初優勝をあげて話題をさらい、かの頂上決戦に臨んだが当時はまだ16歳の高校1年生だった。
圧倒されて、打ち砕かれた。前日初日の3位タイから21位に後退して「今日はひとつひとつショットに余裕を失い、最後まで自分の世界に入ることができなかった」と、唇を噛んだものだ。
ジュニア時代からその活躍を見つめてきた「偉大な先輩」への畏怖の念は相変わらずだ。
「片山さんは日本のナンバー1。今日も緊張してました」。
しかし、あれから2年。「たくさんの経験を積んできたという実感はある」。
破竹の勢いで勝ち星を重ね、国内外で場数を踏んできたという自信もある。
決勝ラウンドでは初の直接対決にも良い緊張感こそあれ、賞金ランキング1位にふさわしいゴルフでひるむことなく、むしろ「心の底からドキドキワクワク」。胸を躍らせ、堂々と渡り合った。
ベテランでさえ対処に苦しむ強風にも、後半の11番まではグリーンを一度も外さなかった。
12番で「フォローの風に対してフックを打って、風に乗ってしまった」と、いよいよ奧のラフに打ち込んだが、逆目のライからチップイン。
「あれは決して易しくないところ。あれを入れちゃうなんて。遼ちゃんはやっぱり凄い」と、同組で争う宮本すらうならせた。
厳しい条件の中で一歩も引かないデッドヒートに、「ここまで混戦になってくると、ひとつのバーディやパーが、凄く大きいのかなと思った」と、近ごろはあまり見かけなかったガッツポーズにも、秘めた闘志がほとばしる。
勝って、なおかつ賞金ランク2位の池田勇太が7位以下で終われば史上最年少の賞金王が決定する。
優勝賞金4000万円を上乗せすれば、プロスポーツ界全体を見渡しても最年少の2億円超えの記録もかかる。
その前に2人の壁が立ちはだかった。
昨年の今大会覇者の小田孔明は、予選2日間を同組で回ったから知っている。
「非常に隙がないゴルフをしている」。
そして、もう一人は世界のマルだ。
2001年の米ツアー初優勝は、石川もテレビで見た。
「その日のテレビでトップニュースになっていた」。
直後のジュニアの大会では、その話題で持ちきりだった。
「僕らもマルちゃんのように、いつかアメリカで活躍したいね」と話し合った思い出。
「プロになった今では絶対にマルちゃんなんて言えないですけど」と、申し訳なさそうに笑った。
それほどの選手を倒して決めたら、これ以上ない結末だ。
「優勝して賞金王が決まる瞬間というのは未知の世界。どういう感じなのかということは、あえて今は予想しなくてもいいかな」とは言いながら、海外を挟んで16戦目の風邪引きを気にして、「そのときに、今日みたいな鼻声だったらカッコ悪い。治しておきたいな」。
今季5勝目と賞金王のスピーチこそ、美声で聞かせる。