記事
JGTO TPC イーヤマカップ 2000
コースセッティングに携わってきた中嶋常幸・大会担当委員がこだわったのは「フェアなセッティング」
トーナメントというのは、時間をかけて作り上げていくものです。なんとか形になるまで、最低3年。今回は昨年の1月からコースセッティングを手がけてきましたが、まだ1年足らずで開催に踏み切り、不完全な部分はたくさんあります。というか、そんな短期間に完璧を目指すなんて、絶対に無理なことなのです。
たとえば、米ツアーのツアープレーヤーズ選手権は、けっして“メジャー”とは言われない。でも、選手が目の色をかえて、勝ちに来る大会であることは間違いない。今年の『JGTO TPCイーヤマカップ』は、いずれはそういう大会にそだっていけるよう、“下地”を作る年、と位置付けています。
今回、大会終了後には全選手にアンケートを取り、それをよりよく反映させていくつもりでいます。そういう積み重ねによって選手たち自身はもちろん、ファンのみなさんにも、今大会の目指すところをイメージしていただき、またそれを徐々に定着させてゆくことが、この第1回大会に求められていることではないか―、私はこんなふうに思っています。
僕が今回のコース設定こだわったのは、「フェアなセッティング」ということ。
ゴルフコースというのは、アレンジ次第でどんな形にも変えてゆけるものです。たとえば、梅雨で距離が長くなるこの時期、ラフをうんと深く設定し、フェアウェーの幅をうんと狭く、10ヤードくらいに設定してしまえば、自ずと、タフなコースになるでしょう。そうすれば当然、大会の難易度は上げられますが、それが本当に「フェアなセッティング」といえるでしょうか。
それは、単なるイジメでしかない。
考えてもみてください。ショートホールは、短いアイアンショットで30ヤード以上もあるグリーンを狙っていくのに、ドライバーで10ヤードしか幅のないフェアウェーを捕らえることなど、人間技とは言えないでしょう。
米ツアーのコースレギュレーションは、フェアウェーの幅を25ヤード前後と決めているそうです。ただでさえ球が散りやすいドライバーショットで、25ヤードの幅を捕らえられたなら、それはファインショットと評価しましょう、との考えがあるからです。
逆に25ヤードの幅さえ捕らえられなかったショットは、あきらかにミス。だからペナルティを課しましょうという、非常に分かりやすいセッティングになっているのです。
今大会も、この考えに基づき、ファインショットとミスショットにはっきりと違いが現れるようにしました。選手が全力を傾け渾身で打ったショットが、結果うまく転がればスコアが出せる。今年、今大会の優勝スコアはおそらく10〜15アンダーの間に収まるでしょう。予想に反して、それ以上のスコアが出てくるかもしれません。でも、そんなことはそれほど大きな問題ではない。先に申しましたように、コースをアレンジすれば、優勝スコアなどは、簡単に変えてゆくことが出来るからです。
それよりも、しっかりとマネージメントされたファインショットには、必ず最高の結果がもたらされる『フェアなセッティング』を提供し、いかに選手たちがやる気を起こさせるか。今後、選手に今大会を、『勝ちたい』と思わせる試合として、位置付けさせるか―。これがもっとも大切だと考えながら、私は今年のコースセッティングに携わってきたのです」