記事

日本で71番目の男が・・・!!

バランタイン選手権の2日目。最終18番パー4で、グリーン奥から10ヤードのアプ
ローチをチップイン。

通算9アンダーにして、4位タイ(14日時点、暫定)に浮上したのは、韓国出身のH
YUNG−TAE, KIM(キム ヒョンテ)だ。

この2日間というもの、「ショットは絶好調」。
問題は、目の強いピンクスゴルフクラブのグリーンだが、「僕だけじゃない。ほかの
みんなも読めてないんだから・・・! そう思って、気を楽に持つようにしたんで
す」。
柔らかな笑みをたたえて、韓国SBS放送のインタビューにそう答えた。

日本ツアーの登録名はH・T・キム。
ファイナルQTの資格で参戦した昨シーズン終盤に悪夢を見た。
シード権争いの選手たちにとって事実上の最終戦・カシオワールドオープンを終え
て、賞金ランクは74位。
その年、出場義務試合数に満たない選手が70位までに5人いたから、実質ランク75位
までの選手にシード権が与えられる計算だった。

キムの初シード入りは、決まったも同然かと思われたが、実はそれには条件があっ
た。

当時、“圏外”にいたウェン・チョン・リャンと、ジーブ・ミルカ・シンが翌週の最
終戦ゴルフ日本シリーズJTカップにエントリー。
2人が同大会で、単独4位以下で終われば首がつながる。しかし、単独4位以上に入
れば上位70人から弾き出される。
だから、キムと当時ランク75位の白潟英純はどっちに転んでも良いように、同週に行
われたファイナルQTに出場してツアーの出場優先順位を取得しておく必要があった
のだ。

キムは考えた。
「こんなどっちつかずの気持ちでQTに出ても、きっと大した結果は得られない。も
しダメなら、韓国ツアーで頑張って、一から出直そう」。

その一方で、楽観する気持ちも正直あった。
「・・・日本のトッププレーヤーが30人も出るんだから。まさか、ジーブさんとリャ
ンさんが2人とも上位に来られるわけがない」。
一昨年と昨年のアジアンツアー賞金王をあなどったことが仇となった。
なんと2人が絵に描いたように、揃って3位タイと大健闘を見せて、キムは約20万円
差で“71番目”の76位に。
QTにも出場しなかったキムは出場権すら失って、まさに一からの出直しとなったの
だった。

「・・・でも、あのとき悔しい思いをしたのが良かったんだと思っています」と笑顔
で振り返る。
「このオフは、一生懸命トレーニングをして凄く鍛えたんですよ」と胸を張る。

昨今の韓国勢の活躍は目覚しい。言わずと知れた英雄、KJチョイに続いてアンソ
ニー・キムやY・E・ヤンらが続々と米ツアーにデビュー。
そして、欧州とアジア共催の今大会は、韓国・済州島が舞台だ。欧州ツアーが、韓国
に上陸したのはこれが初。
「それもこれも、彼らの実績が評価されたに間違いありません」とは、地元メディア
「JNA」のソッキュ・ハン記者だ。

大会は、欧州の出場権や世界ランキングを持たない韓国勢にも、特別推薦などの出場
枠を割いてチャンスを与えた。
その中で、韓国ツアーの賞金ランク25位内で資格を得たキムが、その恩恵をしっかり
と生かし、いま飛躍のときを迎えている。
「もちろん勝ちたい。そして、もっと強くなってまた日本ツアーにも出たいです
!」。

日本での経験をバネに、71番目の男が世界に羽ばたこうとしている。
  • 海を見下ろすピンクスゴルフクラブのクラブハウス前で地元テレビ局のインタビューを受けるヒョンテ

関連記事