記事

ゴルフ日本シリーズJTカップ 2006

ジーブ・ミルカ・シン「ゴルフでは、エゴを貫いても上手くいかない」

1番で8メートルのバーディパットをねじ込むロケットスタート。3連続バーディでさらに2位以下を突き放そうとした矢先だった。

4番で右に曲げた第2打が、ギャラリーに直撃した。
動揺したまま打った第2打は寄せ切れず、ボギーを打った。
「申し訳なさで一杯になって・・・。最初の集中力も、そこで途切れてしまった」という。

それでも、いま絶好調の男はそんな苦境もすぐに跳ね返す。
6番パー5。残り30ヤードの第3打。
「手前のラフに当ててワンバウンドさせて、転がす難しいアプローチ」。
1メートルにピタリと寄せた。
「完璧だった」と、自画自賛のバーディで息を吹き返して4打差のリーダーでのぞんだインタビュー。

「ボールを当てた方には直接、お会いして謝りたい。(打球事故に遭われたことで)しばらく、会場に来るのは怖いかもしれないけれど。これからは、絶対に当てないように頑張ってプレーするので、ぜひまた会場に来てください」と、真摯に頭を下げた。
ケガもそれほどひどくなく、検査結果も良好だったと伝え聞いて安堵した。

今年17試合出場したジャパンゴルフツアーで、予選落ちなし。
記者会見でその話になって、途端に表情が輝いた。

「そういえば、そうだよね!」。

欧州、アジアを含めて今年出場38試合。
次週のアジアンツアー最終戦『ボルボマスターズ』で39試合目。
世界中を旅しながら、ただがむしゃらに戦ってきた1年間。

「そんなこと意識もしていなかったけど・・・そういえば、日本では一度も落ちてない。良いことを教えてくれてありがとう!」。
ますます、自信をつけさせてしまったようだ。

「日本ツアーでの経験が、僕をここまでにしてくれたと思う」というジーブ。
目標物を睨みつける鋭い視線、揺るぎのない集中力は2004年12月、アジア・ジャパン沖縄オープンの敗退がきっかけだった。
最終日、4打差首位でスタートしながら宮里聖志に逆転負け。

「あのとき、常に同じルーティンでプレーする大切さを思い知った。ゴルフは、エゴを貫いても上手くいかないスポーツだ、と。たまには引いて考えてみるという冷静さが身についたと思う」。
最終日を前に、静かに語った。

関連記事