記事

シニアツアーは惜しくも1ポイント差で2位Hitachi 3Tours Championship 2007 DAY2(12月8日)

3年連続の2位に終わったPGAのシニアツアーだったが、大会のムードメーカーとして、今年もその存在感が際立った。

「普段のトーナメントは目をつりあげてプレーするが、この大会は目じりを下げてプレーする」と語ったのは中嶋常幸だった。
大会前日には「ワインはビンテージのほうが美味しい」と話し、「シニアは経験という15本目のクラブを持っている」とそのキャリアと熟練の技を強調しつつ、初日には「ワインも古すぎたらただのビネガー。酢になっちゃって、どうも“ス”みません」と、オヤジギャグで笑わせた。

シニア賞金王の室田淳は、Finalステージのシングルス戦で、片山晋呉を相手に今回自身初の勝ち点3をゲットしたものの、チーム戦では過去に勝利をおさめたことがないそうで、「自分のプレッシャーの弱さに改めてがっかりした」と肩を落とした。
しかし、こうして男子と女子と、同じ舞台で戦うのはめったにない機会だ。
「男子は強すぎて憎らしいけど、女子ツアーのみなさんと仲良しになれてよかった」と終始、エビス顔だった。

尾崎健夫が他チームから恐れられたのは、若手をも凌駕するその飛距離だけではなかった。
文字通り、プレーの合間の“口撃”に、男子も女子も警戒モード。
ジェットがひとことでも発すれば、あたりは爆笑の渦になりとても勝負どころでなくなってしまう。
軽妙なトークは最初から最後まで、常に笑いの中心だった。

そんなジェットが特に目の敵にしたのは、男子チームの近藤智弘だった。
「その理由は明かせないっ!」と、なぜ近藤だったのかは最後までナゾに包まれたまま。
歯に衣着せぬ物言いで、ことあるごとにプレッシャーをかけ続けたが、その甲斐もなく、結局最終戦のFinalステージで、その近藤に4打差で敗れてしょげ返る。

「言い訳してもいいかな」と、冗談めかして原因不明の偏頭痛を敗因にあげたが、実はかなり深刻な症状だった。この夏、立ちくらみとめまいを訴えて、病院に駆け込んだものの詳しい病名は分からなかった。
「この年になると、何が起きるか分からないから」と不安にかられつつ、今年はシニアと男子両ツアーで奮闘。
シニアは賞金ランク4位。男子は67位でみごと、5年ぶり20回目のシード復帰を果たしている。

フルシーズンを戦い抜いた53歳は、「今のこの時期、本当はシニアは人間ドッグで忙しいのに・・・」とおどけつつ、症状をおしてこの女子VSシニアVS男子の対抗戦に登板。
“宴会部長”として、大会によりいっそうの華を添えた。

今年、今大会は従来のストローク戦に加え、新たにダブルス戦を導入。ギャラリーのみなさんには、「普段なかなか見られないゲーム方式で面白い」と大好評だったが、当の選手たちも同じ思いだった。

何より、この日最終日の3rdステージで、ジェットとペアを組んだ髙橋勝成は「このゲーム方式で、改めてジェットの優しさを感じることができた」と振り返る。
ひとつのボールを2人で交互に打つオルタネート方式は、相手のことを思えば思うほど、自分にプレッシャーが返ってくるからだ。

遠慮のない物言いとは裏腹に、「思いやりにあふれ、誰よりも気配りの選手」とジェットを評する人は多い。率先して場を盛り上げようする姿勢こそが、その証でもある。

プレーぶりだけではない。味のあるコメントや振る舞いで、他チームを圧倒した“いぶし銀軍団”。
中嶋は「優勝することがこの大会の目的じゃない。優勝を目指して楽しくプレーする。その先にチャリティがある」と言ったが、それはシニアの面々の共通の思いだった。
「それに、僕らは2位が、ちょうどいいんです。だって僕らが勝っちゃったら・・・やっぱり男子のみなさんにはまずいでしょう?」と友利勝良が、シニアならではの余裕ただようコメントで締めくくった。

関連記事