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ダンロップフェニックス 2010
池田勇太が今季4勝目、逆転賞金王へ名乗りを上げる
やはりあのとき、無邪気に胸に誓った。「俺も、プロになって、ジャンボさんのような活躍をする」。だが2007年にデビューしてからというもの、年々プロの厳しさを痛感するにつけ、それがどれほど怖いもの知らずの無謀な夢であったかを思い知る。
ひとくちに「100勝」と言うはたやすい。だが「それがどれほど凄いことだったか」と、改めて思えばこそ、いまこの地で今季4勝目を挙げられたことが、なおさら嬉しい。
昨年に引き続き、2年連続の年間4勝は、94年、95年、96年、97年の4年連続で4勝以上(※2)をなしとげた、ジャンボ以来の快挙達成だ。
「憧れの方に、ちょっとでも近づけたのではないでしょうか」と、若大将の目尻も自然と下がる。ジャンボのほか、ワトソンやウッズ、永久シードの中嶋や片山ら、錚々たる面々と名を連ね、「いつか勝ちたい試合のひとつではあったので。いろんな意味で、ここで勝つことが自分にとって、どれだけ大事かを、いま噛みしめている状況でもあります」と、誇らしげに胸を張った。
3打差の首位でスタートした最終日は、賞金ランキング1位の猛追をかわした。前半1イーグルを含む7バーディと、牙を剥いた金庚泰(キムキョンテ)との一騎打ちは、11番でこの日初のボギーを打つことで「逆にスイッチが入ったと思う」。
そのあと12番から連続バーディで応戦し、この難コースにあっては、何打差で最終ホールを迎えようとも、何が起きるか予測もつかず「最後まで分からなかった」とは言いながら、金に1打リードで迎えた15番で、4メートルのパーパットをねじ込んで、2度握りしめたガッツポーズに確信がこもった。
「下りスライスの難しいパットはラインが見えていたので。自分を信じて打つだけでした」という。「自分がやってきた経験と、勝ちたいという気持ちの強さと、賞金王への思い。すべての気持ちがこもったパットになりました」と、振り返る。
ちょうどそのころ、金が17番パー3でダブルボギーを打って、再び3打差がついた。18番も3打目を、複雑なライのバンカーに打ち込みながらパーでしのいで「充実」の66は、最終日こそビッグスコアのいつもの優勝パターンで逃げ切った。
狙った大会は、絶対に逃さない。今季、最終日を最終組で迎えたのは、「トーシンゴルフトーナメント」と「ANAオープン」と「ブリヂストンオープン」と、そしてこの「ダンロップフェニックス」の4試合。そのすべてで勝利を飾った。
普段はぶっきらぼうだが、心根はことのほか義理人情に厚い。今季4勝のうち、2つは世話になっているスポンサーが主催する大会であったり、またジャンボが得意とするコースへのこだわりであったり、いずれも何らかの強い思い入れを持つトーナメントで「俺が勝つ」と宣言して、有言実行。
「なんでかなあ。俺が聞きたいくらい。そういう大会では、なぜか、不思議とうまく帳尻があって、すべてが揃う」と言った。ひとたび首位に立てば、今季は勝率100%の常勝ムードもまた、あのころのジャンボの姿と重なっていく。
これで賞金ランキングは3位に浮上したが、金が単独2位につけたことで、差は思ったよりも、縮まらなかった。
昨年は、石川遼に譲った賞金王の座も「まあ、簡単には獲らせてくれないということ。“あなたもあと2試合、気を抜かずに頑張りなさいよ”と、言われているということでしょう」と、金との約4100万円差も「神様」からの啓示と受け止め、闘志に変える。
逆転の賞金王には、残り2戦で少なくとも1勝を挙げることが、最低条件となった。この上ない厳しい試練に「だからいま、慌てて漕いでるわけです。残り2試合も、一生懸命漕ぎます。死にものぐるいでやっていきます」。
ジャンボ尾崎は過去12回の賞金王に輝いている。“後継者候補”を名乗るからにはなおさら早く、まずはそのスタートラインに立たなくては。
(※1)大会の歴代日本人チャンピオン・・・85年=中嶋常幸、94年・95年・96年=ジャンボ尾崎、00年=片山晋呉、02年=横尾要
(※2)ジャンボ尾崎の連続年間4勝以上記録・・・94年=7勝、95年=5勝、96年=8勝、97年=5勝