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三井住友VISA太平洋マスターズ 2010
石川遼は「初日から、優勝の二文字を目指してプレーする」
恒例のプロ・アマチャリティトーナメントでチームを組んだのは、花田勝さんと、杉山愛さん、そして桑田真澄さんと、各スポーツ界でいずれもトップを張ったみなさんから聞く体験談や教訓は、19歳には目からウロコの連続だった。
昨年から2年連続のラウンドとなった元・プロテニスの杉山愛さんはもちろん、元・横綱の花田さんが言った。
「相撲は最初の40秒で決まってしまう。でも、ゴルフは長時間、集中力を保たないといけないから相撲よりもずっと大変だね」。
しかし、石川にしてみれば「ゴルフは最初が悪くても、挽回出来る可能性がある。でも相撲は一瞬ですべてが決まってしまう」と、そのシビアな世界に思いを馳せて、イメージを膨らませた。
また元プロ野球の桑田さんは、「ミスしたときは当然だけど、良いピッチングをしたときも、酔いしれてちゃいけない。1打1打、気持ちの切り替えが大事なのは、ゴルフも野球も一緒だね」と言われて、「確かに、そのとおりです」と、大きく頷く。
石川は15歳でツアー初優勝をあげた。
桑田さんもまた、同じ年に甲子園で高校1年生ながら、エースとして活躍した。そして卒業後は読売巨人軍に入団。
世間の注目を浴び続ける中で、常に良いときばかりではなかった。たくさんの「逆境」も経験された。自分自身の来し方と、石川のこれからを重ね合わせて「環境は変わる。その中で悪いこともあるけれど、そんなときこそスポーツマンらしく、前を向いていて欲しい」と桑田さんは言われた。
「特に、ゴルフは息の長いスポーツだから。ゴルフでも、人生でもいっぱい失敗しながら大きくなって、50、60(歳)になっても遼くんには一線で活躍して欲しい」と、思いを託された。
激動の人生を歩んできた桑田さんの言葉は、自然と石川の胸に染みこんだ。
何より、まさに賞金レースを争うこの時期に、スイング改造に踏み切った石川の挑戦には桑田さんの激励が、「背中を押してくれたと思う」。
石川本人も、この大事な時期に、「今のスイングで悪くないのだから、変える必要はないんじゃないか、と考えているもう一人の自分がいた」というように、そこに逡巡がまったくなかったわけではない。
それでも目先にとらわれず、さらなる高みを目指して勇気を出した石川に、「それでいい」と、桑田さんは言ってくださったのだ。
「僕も、毎年フォームを変えた」と自らの経験をなぞらえて、むしろ「辞めるまで、改良を続けていくのがスーパースター。5年後、10年後の種を蒔きながら、なおかつその中で結果を残していくことが大事で遼くんも、その両立が出来る人だと思う」。
偉大な人物に太鼓判を押されて御殿場に挑む石川は、この日もスイング、パットともに入念な調整で「思ったよりも、良い状態で初日が迎えられる」と、晴れやかな笑み。
「初日から、優勝の二文字を目指してプレーする」と、頼もしい。