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ヤンが優勝、全米プロゴルフ選手権
前半、ボギーが先行したウッズの尻尾をがっちり掴んで離さなかった。14番でイーグルを奪い、1打リードで迎えた17番から、ウッズがまさかの連続ボギー。
対して最終ホールをバーディで締めくくったヤンに、栄冠は転がり込んだ。
アジアに初のメジャータイトルをもたらした。
胸囲100センチを超える屈強な肉体は、18歳から2年間続けたボディビルで作られた。
どんなピンチにもぴくりともしない強靱な精神力は、母国韓国の兵役で養われた。
本格的にクラブを握ったのは、19歳のときだった。
練習場の球拾いからスタートしたゴルフは、海軍で訓練を受ける間も休まなかった。時間さえあれば球を打ち、寝る間も惜しんで練習に励んだ。
「一流になるためには、まず、日本で頂点に立たなければ」と心に決めて、2000年に単身来日。
日本ツアーで4勝をあげ、自信たっぷりに世界の舞台へと飛び出していったヤンは、憧れの先輩プロ、K・J・チョイをお手本にスターダムをのし上がっていった。
今年3月のホンダクラシックで念願の米ツアー初優勝。
2006年には、欧州とアジア共催の『HSBCチャンピオンズトーナメント』でもやはりウッズを2打差で下して優勝した経験があっただけに、この日最終日も世界最強の男を相手に堂々とした戦いっぷりだった。
一方、日本の藤田寛之と、石川遼は揃って通算8オーバーの56位タイに終わった。
この日6ボギーの78は、バーディがひとつも取れずじまいだった藤田は「全力を出した結果がこの形。自分の力不足がめちゃくちゃ悔しい」と吐き出す一方で、2年連続の決勝ラウンド進出には「4日間プレーしたという意味での充実感はある」と前向きに、「この悔しさを今後の課題として自分の中にしまっておきたい。持ち帰って、次につなげます」と、気丈に話した。
石川はこの日、フィル・ミケルソンとのラウンドに「出だしは世界トップの選手と一緒に回るという緊張感があった」と、1番でいきなりボギー。
3番、4番でもボギーを打ったが、後半からいつもの持ち味が戻った。
9番で20メートルもの長いバーディパットを沈めて折り返すと、名物ホールの16番で、サンドウェッジで打った第3打をチップイン。15番からの連続バーディに、本場の大観衆を沸かせた。
ミケルソンとのラウンドを楽しむ余裕も生まれ、高レベルのパフォーマンスをその目に焼き付けつつ、ときおり笑顔で会話を交わすなど「今日は最高の1日」と、初めて味わうメジャーの最終日を、存分に堪能した。
この4日間で自己ベストの72には「あと4日間回れば、アンダーパーが出せたかもしれないけれど」と、言って照れ笑い。
今季最後のメジャー戦に「これで終わってしまうのは寂しい」と名残惜しそうに、「将来は、メジャーでプレーし続ける選手になりたい。またこの舞台に必ず戻ってきたい」と力をこめた。