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東建コーポレーションカップ 1999

最終日、プレイバック

最終日の谷口
最終日の朝。横なぐりの雨が降りしきる中、練習グリーンでジャンボは、空を見上げ、こう言ったという。
「きょうはひと波瀾、あるな」
語りかけた相手は、3日目、首位に立ち、4年ぶり、悲願の復活Vをもくろむ中嶋常幸だった。
ジャンボ流の駆け引きだろうか。
「いや、俺にももうワンチャンスあるな、と言っただけだよ。でも、向こうが『いや、ふた波瀾あるよ』って答えてた。向こうのほうが弱気だったね。俺としては、『チャンスなんてないよ』って答えてもらいたかったんだけど(笑)」(ジャンボ)有言実行が、ジャンボの真骨頂だ。
1番で、いきなりバーデイを奪うと、4番、6番、7番と、着実にスコアを伸ばしていく。
出足で右へ右へとショットがぶれ、おまけに3番ショートで3パットするなど、「きょうの僕は天気も気持ちもダークグレーの世界」と中嶋。
ずるずる優勝戦線から脱落していく。

その中嶋と首位タイでスタートした谷口徹も、前半、2バーディ、2ボギー。取っては落とし、落としては取り、と思うようにスコアを伸ばせない。
「ジャンボさんが追いついてきているのは、もう9番あたりで知っていました。
でも僕にはまだ残りホールがあるっていいきかせた。僕の中には、16アンダーまで伸ばして勝つという筋書きがあったから」(谷口)

ジャンボが、谷口をがっちりよつに捕らえたのが16番ミドル。右にドッグレッグしたホールで林ごえのショートカットでグリーン手前に運び、そこからきっちり寄せてバーディ。
15アンダーで、最終組の谷口を待つ。
谷口は、13番でバーディを取るも、14番でボギー。勝負は最終18番までもつれこんだ。

「谷口は、15番のロングでとれなかったのが大きいんじゃないか。
15番取れれば、16番でもチャンスがあるからね。近くから、アプローチできるからね。そこで16アンダーの逃げ切り、というのが彼の頭にはあったんじゃないかな。
でも、ワンストロークの接戦というのは、そんな簡単なものじゃないんだ。本人は一生懸命やって、なんとかしようというのがあるんだけど、そうはいかない。勝ちたくて勝ちたくてやるんだけど、うまくいかないのがゴルフなんだ」(ジャンボ)

タイスコアで迎えた谷口の、18番ミドル。2打目、残り170ヤード、「ライがよいよころにあったから狙いにいった」という球は、グリーン奥のバンカーへ。
「風のジャッジを間違えたんです。もっとあげていると思った。強く打ちすぎてしまったんです」(谷口)

 バンカーからの球は、寄せきれずピンから約5メートル。ややスライスぎみと読んだパーパットは、わずかにカップをそれた。
「くやしい、勝たせてしまったようなもの。こんな負け方、屈辱です」。やっぱり、ジャンボは強い、凄い。
誰もが、そんな普通の言葉で表現するしかないような、新ツアー開幕第1戦が、終った。

ジャンボ尾崎
「きょうは俺は6アンダーにするつもりだったんだ。最後18番のバーディパットを入れていたら、その通りになったんだけどね。自分としては苦しい内容だったな。まだこの時期、自分の中に力感みたいなのが戻ってないから、勝つには勝ったが納得度は低い。開幕戦は、自分のほんとうに持っているものを、思い出させてくれるゲームだ」

谷口徹
「ジャンボさんは、僕にとって、超えなければならない壁。今度は、直接対決で必ず勝ちます」

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