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池田勇太は特別賞を受賞
本格参戦から2年連続の年間4勝は、97年の尾崎将司以来、13年ぶりとなる快挙達成が評価され、社団法人日本ゴルフツアー機構より記念の楯と、同ホテルより「スイートルームペア宿泊券」が贈られた。
「去年は遼と一緒に4勝しましたが、今年は僕だけ。ひとつの誇り、また自信にもなる。自分を褒めたいと思います」と、晴れやかな笑顔を見せた。
あいかわらず、ドレスアップは貫禄たっぷりの三つボタンのダブルのスーツ。しかも「ライトが当たると光る生地なんです。でも、普通に着ていれば、そんなに派手でもないでしょう?」と、平然と言った池田に、かたわらの石川遼がすかさず突っ込んだ。
「いや、十分すぎますよ」と、19歳に指摘されても若大将は破顔一笑、「そうかな?」と受け流し、参加した満員のゴルフファンや関係者の笑いを誘った。
もっともその前日は、ニコリとも出来なかった。
改めて振り返っても悔しい、不甲斐ない。今季のツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」は初日から、エンジン全開。昨年は、石川遼に譲った逆転の賞金王は、今年も最後に勝つしかない、という厳しい条件を承知で「賞金王になっても、なれなくても最後は絶対、俺が勝つ」。
何がなんでも、優秀の美を飾る。並々ならぬ覚悟で迎えた初日は期待を裏切らない首位発進。3日目こそトップを譲り渡したが、4打差の3位タイからスタートした最終日も強い決意は変わらなかった。
前半は怒濤の5バーディで、一度は41歳のリーダーを捉えた。藤田寛之が振り返る。「あの日、勇太はスタートからハンパないバーディラッシュ。このままサラっと行かれるのか」と、ベテランのチャンピオンも、途中ひそかに怯えたほどの猛追だった。
だからこそ、なおさら悔しい。
「この1年間、やってきたことを一番出さなければいけない後半の9ホールで、チャンスが来ても、来ても入らない」。
むしろ、2ボギーで失速した。「前半の9ホールはなんだったのかと。そしてこの1年間、やってきたことはなんだったのかと」自分を責めないではいられない。
結局、5位タイに沈んで2010年は、あっけなく幕を下ろした。
「優勝する、優勝するとあれだけ言っておきながら、勝てなかった。今年もまた、最後までチャンスを残しながら、最後にやっぱり賞金王になれなかった」。
ほとばしる悔しさを、選手お揃いの真っ白のベンチコートでくるんで参加した、全員出席の閉会式。が、しかしそこでも終始うつむき加減のままだった。
今季、最多勝利をあげても、頂点に届かなかった。
怪我に苦しんだ昨年の反省から、専属トレーナーの福田努さんのサポートを受けて、「怪我とは無縁で過ごせた1年間」。
それにもかかわらず、今年も夢破れた。「何が足りなかったのか。最後に勝っていれば、なれたのか。良いときと悪いときの差が激しかったせいなのか……」。
押し寄せる悔恨を懸命に振り切って、若大将は前を向く。
「4勝したことで、改めて勝つことの難しさを知った。体がどれだけ大事かも。このオフは今まで以上に体を鍛え、来年もまずは1勝、という気持ちでやっていきたい」。
そして来年こそ、3度目の正直といきたい。
※池田は平均パット数で1.7345を記録して、ランク1位に輝きました。