記事

東建ホームメイトカップ 2012

上平栄道(うえひらまさみち)は、春に父親の自覚も満開に

何度回っても、この人とのラウンドは慣れるということがない。同時にその緊張感は、きまって良いほうに働く。「不甲斐ないプレーは見せたくない。練習ラウンドから気合いが入っていた」。
そして今朝は、その張本人が、プレッシャーを解いてくれた。
早朝から吹き荒れた多度名物の強風も、「いいなあ、おまえは風が当たらないから」。身長158センチは、シード選手の中でもっとも小さい選手はジャンボ尾崎にそう言われてはにかんだ。

2012年ツアーの最初のラウンドは、そんなからかいが現実のものとなった。
「確かに、風も僕の上を通り過ぎてくれたんですかね」とは本人の冗談としても、風吹きすさぶ難条件で、上がりの3連続バーディなど、67はさすがのこの人もうなった。

「ジャンボさんが、僕の顔をちらりと見て“ほぉ〜”と」。
中でも大御所の羨望を受けたのは、グリーン上。6番で8メートル。8番、11番では10メートルのバーディパットを決めるとジャンボの感心はいっそう深く。
開幕直前に最終調整の目的もあって、出場した地区オープンは、もっと強い風が吹いて「パターでも、ストロークが揺れたほど」。
その経験から、ヘッドの重量を増やして風に負けない道具に変えた。加えてパターのシャフトを1インチ伸ばし、グリップも太めにして転がりも良くした。「今日はアイアンのばらつきも、パットがカバーしてくれた」と、絶大な効果があった。
シード2年目の開幕戦は、スタートダッシュに成功した。

オフは例年どおり、タイ・バンコクでのラウンド合宿に加えて数試合の地区オープンの出場のほかは、もっぱら家で“イクメン”に徹した。
妻の香織さんを手伝って、昨年10月に誕生した長男の瑛翔くんの育児に励んで自覚も芽生えた。
「僕は家族を守っていかなくてはいけない」。
一家の長としての責任を深めて迎えた今季初戦。
「がんばろうという気持ちはすごいある」。ツアーで一番小さいプロの闘志は、いま誰よりもデカイ。

関連記事