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ダイヤモンドカップゴルフ 2012

池田勇太は「ここで10勝目なら、寂しいような嬉しいような」

家からトーナメントに通うのは、リラックスしすぎて、あんまり・・・という選手も意外と多いが池田はむしろ、歓迎だ。「今年最初の自宅通勤。やっぱいいやね」。今週は出身の千葉県内の大会とはいっても、市内からは車で1時間と、さほど近いとは言えないが、もちろん通う。

女手一つで育ててくれた母のゆみさん。
「おふくろもいるし、楽だよね。ほっといてもなんでもしてくれるしゆっくり出来る」と、わざとぞんざいな言葉使いも、実は常に家族第一の孝行息子だ。

「じいちゃんや、ばあちゃんの前で、10勝目を見せられればいいな」と、このときばかりはふと、優しい顔になる。

今週は、専属キャディの“福ちゃん”こと福田央さんがきゅうきょお休み。「3番目の子が生まれる予定なんで」と、いつも献身的に支えてくれる最良の相棒には快くお休みをあげた。

“代打”をかって出てくれたのが、プロキャディの伊能恵子さん。「俺と一緒で“千葉組”なんだ」と池田も言ったとおりに、互いの実家なら車で10分。いま住んでいる自宅も20分とかからない距離にあり、近くの練習場の北谷津ゴルフガーデンで練習している池田を少し離れた打席から、「よく盗み見てます」と伊能さん。

母親のゆみさんにもよく近所のスーパーで遭遇するそうで、「今日、伊能さんが自転車で買い物に来てたわよ、とか」。

もっともただご近所さんのよしみというだけで、起用を決めたわけもなく、伊能さんは男女ツアー合わせて7勝をアシストした実績もあり、またリンパマッサージ師の資格も持っている敏腕で、何より祖先があの伊能忠敬(いのうただたか)。全国行脚で史上初の日本地図を完成させた、江戸時代の偉大な測量家の末裔である。

それだけにピンまでの距離計算も、お手の物ときている。

身長176センチもある伊能さんとの二人三脚は、昨年の女子とシニアと男子の対抗戦の「日立3ツアーズ」でも経験済みだが、「試合では初めて」という伊能さんの不安をよそに、早くもプロアマ戦から息もぴったり。

終始、笑いの絶えないラウンドに、気分も高まる。
また予選ラウンドは、尊敬してやまないジャンボ尾崎との組み合わせに今から池田の胸も高まる。
「ここで勝ちたい」。
地元で区切りの10勝目にむけて、お膳立ては整ったはいいが、実は人情に厚い若大将は、ちょっぴり複雑。「福ちゃんがいない10勝目になったら寂しいような、嬉しいような・・・」。
過去9勝をアシストしてくれた無二の相棒には、これ以上ない出産祝いにもなるはずだ。

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