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2014年の新顔! QT3位の木下稜介は「英樹にも負けない」
昨年オフからスタートしたこの強化合宿は「同級生がすでに何人か参加していて、みんなが“すごく納得出来た”と」。特に、廣戸聡一氏が提唱する4スタンス理論に基づいたトレーニングは、誰もが目からウロコと聞いていたから「とても楽しみにしていた」と、胸躍らせての宮崎入り。
フェニックスカントリークラブの恵まれた練習環境での打ち込みは「廣戸先生に言われたことを意識しながら打つと、いつもよりずっと振りやすい」と、快打を連発した。いよいよ今年、デビューを控えて必ず得るものがあると、さっそく確信出来たこの日は2月18日の合宿2日目だ。
父親の影響でゴルフを始めた10歳のころこそ野球との両立もあり、さほど熱も入らなかったが、高い志を持つようになったのは中学生になってから。
「プロになりたい」と、思い切って家を飛び出し香川西高校へ。今季初シードの河野祐輝や片岡大育らを輩出した名門校は、「6時から朝練。授業のあとは練習場まで7キロのランニング。夜は9時まで練習」という厳しい環境にあえて飛び込んだのは、「僕は練習をしていないと落ち着かない性格なので」。
高知の明徳義塾高校にいた同い年の松山英樹に出会ったのもこのとき。ライバルにも恵まれて、四国でどっぷりゴルフに漬かった3年間は宝物。この正月に、ふいに届いた松山からのメールは「あけましておめでとう」。
「・・・あいつがメールをしてくるなんて。珍しいな」と首をかしげながらも返信を打った。
「今年は俺もツアーに出られるのでよろしく。一緒に練習ラウンドを回ろう」。
松山はちゃんと知っていたのだ。昨年末には、ジュニア時代にお世話になった地元奈良県のジュニアゴルフスクールのお手伝いに行ったときに、講師として参加した谷口徹と上平栄道にも「すごいやん!」と褒められた。翌年のツアー出場優先順位を決めるファイナルQTは6日間の長丁場で初挑戦にもかかわらず、木下が堂々ランク3位につけたこと。
2014年は前半戦の出場権を得たことを松山も知っていて、新年の挨拶メールをしてきたのは間違いない。いよいよ、同い年のライバルと同じ舞台に立てる。「いやいや・・・英樹のあの活躍はありえない。まだまだとても追いつけない」と、史上初の“ルーキーキング”には心底、脱帽しながら「負けられない」。
今回の宮崎合宿では講師陣として名前を連ねた鈴木規夫はツアー通算16勝。その鼻っ柱の強さから、かつて“九州の若鷹”の異名を取った大先輩にも聞かれた。「木下、お前は石川や松山に負けると思うか?」。名指しをされて、直立不動で首を振る。「それだ、それでいい。心の中だけでもいいんだ。絶対に俺が勝つと思えないやつは、必ず負ける」と言われて今度は深くうなずく。
今も志の高さはジュニア時代のまま。いよいよルーキーイヤーを迎える今年は「ツアーで2勝を狙います」。1勝はまぐれ、2勝目以降こそ真の実力とも言われる世界で「たまたま、と言われない成績を残していきたいので」。強い気持ちで開幕のときを待つ。